2024.08.13
だれもが自分らしく生きられる社会へ
LGBTQ+トークセッションイベントレポート
LGBTQ+の権利について啓発を促す「プライド月間」に合わせたトークセッションイベントが、6月26日、東京ミッドタウン八重洲で開催されました。主催は、住友生命保険(相)・ダイキン工業(株)・大和証券グループ・三井化学(株)・三井不動産(株)の5社。特別ゲストにはるな愛さんを招き、たくさんのワーカーの皆さまにご参加いただいた本イベントの模様をお届けします。
■ゲスト紹介
はるな愛さん タレント・歌手
大阪府出身。男の子として生まれ、たくさん悩んで努力を重ね、女性としての生き方を選ぶ。テレビ・ラジオ番組、広告、イベントに出演し、人権にまつわる講演会などでも活躍するほか、実業家としての顔を持つ。また、被災地支援や子ども食堂などのボランティアにも注力。
2008年 口パクものまね「エアあやや」で人気を博し、テレビ番組に引っ張りだこに。
2009年 『ミス・インターナショナル・クイーン2009』で世界一の称号を得る。
2010年 『24時間テレビ』のチャリティーマラソンランナーに抜擢され完走を果たす。
2013年 韓国観光名誉広報大使に任命され、現在も日本と韓国のかけ橋に。
2021年 東京2020パラリンピック開会式でオープニングパフォーマーとしてトップバッターを飾る。
2023年 新曲「まぼろし ザワールド」をデジタルリリース。
男の子に生まれ、女性として生きる。その困難
当日は、現地69名、オンライン236名の皆さまが参加され、16時半よりスタート。今回は、会場とオンラインをつなぐツールとして、リアルタイムアンケートシステム「イマキク」が採用され、参加者全員の一体感あるイベントとなりました。
盛大な拍手に包まれ、特別ゲストのはるな愛さんがにこやかな笑顔で登壇すると、まずはそのプロフィールが紹介されました。ユニークなキャラクターと多彩な才能で広く親しまれるはるなさんを前に、会場の雰囲気も沸き立ちます。
イベント冒頭には、イマキクを通した参加者へのアンケートを実施。「ご自身のLGBTQ+理解度は?」と投げかけられた質問に対し、「よく理解しておりALLY(支援者)を宣言している」「理解している」が全体の44%、「なんとなく理解している」が多くを占めた一方、「ちゃんと理解していないかも」と回答した人も一定数いました。それぞれの思いを胸に早速トークセッションが始まります。
「ご自身の性に初めて違和感を持ったのは?」という質問には、「物心ついた頃からですね。幼稚園ではいつも女友達と遊んでいましたし、おままごとではお母さん役をしていました」とはるなさん。小学校入学時、期待していた赤いランドセルではなく、黒いランドセルを買い渡されてショックだったこと、体重測定やプールの時間をトイレに隠れたり、仮病を使って乗り越えたこと。男の子に生まれたことで経験したとまどいや困難が、具体的なエピソードとともに語られました。
思春期になると、自身の性自認と身体的な変化のギャップから「男として生きるか、女として生きるか」の二択で悩む日々に。そしてその葛藤の中で「生きるか死ぬか」というところまで追い詰められたこともあったそうです。
大変な体験を、ユーモアを交えて明るく話すはるなさんの語り口に、会場全体が引き込まれます。
転機になったのは、14歳で連れて行ってもらったニューハーフのお店だったとのこと。そこで働く先輩たちから、メイクや装い、生き方について多くを学んだとはるなさんは話します。「私にとってはそこが女の子になれる場所で、女性に近づく第一歩になりました」
偏見や差別に直面しながらも自分自身のアイデンティティと向き合い続け、19歳で性別適合手術へ。ただ、女性の体となったことで苦労が消えたわけでは決してなく、ニューハーフとして奇異の目で見られることが少なくなかったそう。
上京後は収入が不安定な時期が続き、自身で経営するお店がようやく軌道に乗ってきた中、喉の慢性ポリープで声が出なくなるという逆境に見舞われました。そんなはるなさんを救ったのが、大好きな松浦亜弥さんのモノマネを口パクにした「エアあやや」でした。これが大ブレイクし、テレビ進出へのきっかけをつくります。「自分の一番のコンプレックス『男であること』が最大の個性になって、大きな歯車が動き出した感じでしたね」とはるなさんはどこか懐かしむ様子を見せます。
一人ひとりの個性・価値観の違いを知るということ
当時まだLGBTQ+という言葉はなく、後になってそれが言われ出してからもピンと来なかったというはるなさん。「大西賢示(本名)として生きてきたことを含めて自分」と考え、今も戸籍は男性のままにしており、「T=トランスジェンダーという型にはめられると、正直いまだに違和感はあります」と複雑な気持ちを明かします。
性的マイノリティへの理解が広がりつつある現代でも、内実は非常に多様で、LGBTQ+の一言ではグループ化できないことをはるなさんは指摘。「この言葉ができて救われた人がいれば、馴染めない人もいる。レインボーパレード(LGBTQ+のコミュニティを祝うイベント)に参加したい人がいれば、したくない人もいる。それが多様性ですよね」と、一人ひとりの個性や考え方を見つめる姿勢を示します。
性別適合手術を受けて女性になり、女性と結婚したレズビアンの知人の例などにも触れ、「『LGBTQ+
をどこまで理解していますか?』という最初の質問、私だったら『よく理解していないです』と答えるかも」と話し、多くの参加者をはっとさせました。
カミングアウトを悩む人について話題がのぼると、はるなさんは高校生のときに父親に「女の子として生きていきたい」と打ち明けたエピソードを話し、「すごく勇気がいるし、世界が変わるし、今までの関係が全部崩れちゃうんですよ。無理して面と向かって言わなくても、自然な流れで伝わるのでもいいのでは」と回答。
一方で、最近では少しずつ社会の認知度が高まっていることにも触れ、「『うちの会社にもレインボーのお手洗いができたし、言ってみようかな』というふうに、環境が変わるとカミングアウトを考える人は増えるのかもしれないですね」と、周囲が理解を示すことの大切さを語りました。
イベント後半では、イマキクを通し参加者から自由な投稿を募りました。受付開始から数分を過ぎる頃には画面上で追いきれないほどの投稿があり、健康や美容の秘訣、休日の過ごし方から、今後の人生で挑戦したいことなど、多様な質問が続きました。
「恋愛観を教えてください」という質問には、「『この人が好き』と思うのは、一緒にいるときの心地よさだったり楽しさだったりで、性別って関係ないなと思うようになりましたね。今後好きになるのは女性かもしれないし、男性かもしれないし、それは自分でワクワクしています」と答え、あくまで自分らしさを大切にするはるなさん。
また、「社内にALLYを増やしたいのですが、何かできることはありますか?」という質問に対しては、「自分の悩みをオープンに話せない人はきっと多くて、他の人はそれを察しにくいもの。まずは言いにくいことを匿名で意見を言えるような環境を整えては」と述べられ、多くの参加者が頷く様子が見られました。
多様性を受け入れ、つながりを広げていく
トークセッションへの感想も、イマキクには多数寄せられました。「自分の思い込みや『わかったつもり』を反省しました」「自分もみんなも多様性のひとり」「一人ひとりの気持ちに寄り添って本当の意味でのALLYになりたい」「これまで参加した講演会で一番感動。考え方を改めるきっかけになりました」などさまざまな声が集まり、たくさんの人の心に響いた1時間半になりました。
締めくくりとして参加者へのメッセージを求められると、はるなさんは今回のイベントが5社共同開催だったことに触れ、「違う会社同士で集まり話し合って価値観の違いに気づき、つながりが生まれるのが、まずダイバーシティと思っています。もし今日、少しでも何か変われるきっかけを得られたなら、ぜひスピード感をもって動いていただきたいですし、取り組みをどんどん大きくしていただきたいです」と話しました。
記念写真撮影の後、はるなさんを大きな拍手で見送ってから、会場では任意参加による懇親会を開催。参加者の皆さまは丸く集まって座り、和やかな雰囲気のもと、ざっくばらんに感想を述べ合いました。LGBTQ+についてあらためて考えるきっかけになったという声が多数聞かれ、中でもLGBTQ+という言葉で単純にパターン化できず、一人ひとり違いがあること、今自分の目の前にいる人に思いやりを示す大切さに触れる人が目立ちました。
今回のイベントで現地に来場された方には、多様性を表すレインボーカラー6種類のオリジナルクッキーのプレゼントも。細やかな心配りが参加者の笑顔をつくる会となりました。
『三井のオフィス』は、今後も一人ひとりの違いを受け入れ、認め合う環境づくりに向け、DE&I推進につながるさまざまなイベントや情報発信を続けていきます。
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