2024.03.21

男性育休経験者にきく!「育児と仕事の両立セミナー」開催レポート

三井不動産では、相互理解の推進や、ライフステージの変化に合わせた情報提供などを通して、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進しています。

今回は、「Fathering=父親であることを楽しむ」の理解・浸透によって働き方の見直しや企業の意識改革、次世代の育成を目指すNPO法人ファザーリング・ジャパンの理事を務める塚越学氏にご登場いただき、育児休暇取得経験者である男性社員2名の登壇のもと、その体験をシェアし男性育休について考えるイベントを開催しました。

<ご登場いただいたパネリストの皆さま>
・NPO法人ファザーリング・ジャパン理事 塚越 学 氏
・三井不動産商業マネジメント株式会社 溝渕 槙哉 氏
・三井不動産ビルマネジメント株式会社 足立 優介 氏

法改正により、男性も育児休業を取りやすい状況に

今回のイベントは12時~13時のお昼時間にオンラインにて開催し、多くの方にご視聴いただきました。
最初に2022年4月から段階施行されている改正育児・介護休業法について、塚越さんよりご説明をいただきました。「改正法では、育児休業の申出・取得をしやすい雇用環境の整備と、妊娠・出産の申出をした労働者(本人または配偶者)に対して個別に制度周知し休業取得の意向の確認を行うことが、企業に対し義務化されました。また、育児休業の分割取得が可能になり、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できる産後パパ育休(出生時育児休業)制度も新設されました」
3人のお子さまの育児の中で数度の育休を経験している塚越さんは、産後パパ育休はぜひ取得してほしい、と言います。ここでママに頼らずパパがワンオペで育児・家事できるようになっておくと、その後、パパ・ママがチームとなって子育てできるためです。
一度にまとめてではなく、期間を分割して育児休業を取得できるようになったことも押さえておいてほしいポイント。ママが職場復帰するタイミングでパパが育休を取得し、夫婦の仕事の状況に合わせて、交代しながら子どもの保育園入園までつなぐなど、家族の実情を踏まえて柔軟に制度を利用することが可能です。

「育休を取る」伝えた時の妻や職場の反応は?

こうした制度の状況を踏まえたうえで、育休経験者である溝渕さん・足立さんに経験談をお聞きしました。
なぜ育休を取得しようと思ったのか、当時の心境について、足立さんは「つわりや出産の大変さを代わることはできないが、産後の育児の大変さについては妻とシェアできると思った」と振り返ります。育休の取得を考えていると奥さまに話したところ、「ほっとした」という反応が返ってきたそうです。
溝渕さんは第1子・2子の誕生時に取得しなかったこともあり、当初、育休を取ることは考えていなかったと言います。妊娠を報告した上司に意向を確認された時も「長期の育休を取らなくても問題ない」と答えましたが、その報告を聞いた奥さまの表情にハッと我に返ったそうです。「第2子誕生の時は単身赴任中で、第1子は幼く家事育児も大変な時だったがほぼ妻任せにしてしまった。今回は妻をサポートしないと夫婦の信頼関係に関わると思い直しました」
お二人の話に対し、塚越さんは「育児も家事も、パパがサポートするのではなくママとシェアするという足立さんの感覚は非常に大切。また、出産前後も自分一人で家事育児を担わなければならないという奥さまの不安に、溝渕さんが向き合ってくれて私もほっとしました。育休体験の機会を失わずに済んだという意味でも良かったと思います」とコメントしました。

育休取得を決断した後の行動や準備について。足立さんは、当時は周囲に前例がなく、自分自身も育休制度に関しての知識が乏しかった、と言います。人事部に問い合わせて制度や自社における内容をヒアリングし、部署に取得の意向を伝えて業務のシェアや引き継ぎの相談をしたとのこと。
溝渕さんも上司に取得の意向を伝えたところ、その方が部署や人事部に働きかけてくれ、手続きがスムーズに進んだそうです。配属先の商業施設で一緒に働いているメンバーにも育休取得について伝え、前向きに送り出してもらいました。
「男性の育休取得は、当事者自身の精神的なハードルが高いとよく言われる」と塚越さん。周囲に迷惑をかけることを懸念して取得を言い出せないケースもまだあるものの、意向を伝えてみると思いのほかポジティブに受け止めてもらえる。日本もそんな風土になってきたのかな、とお二人の体験談を聞いて感じたそうです。

育休中は家事に育児に大忙し。そして気づいたこととは

実際に育休を取っている時のライフスタイルは、溝渕さんも足立さんも、起床から就寝まで、食事の支度や掃除、洗濯と家事三昧。溝渕さんは妻と話したり、子どもと遊んだりする時間を多く設け、家族の笑顔を目にすることが多かった、と振り返ります。職場の仲間に気持ちよく送り出してもらったこともあり、育休中は今自分ができることに全力で取り組むことを心がけ、仕事のことはほとんど考えなかったそうです。取得期間は1カ月半、終わりが明確だったため、育休中は育児に集中することができた、と語りました。
育休を2回取得している足立さんは、2カ月の育休を取得した1回目の長女出産時について紹介。自身の自由時間に赤ちゃんの世話をし、その間、夜に授乳している奥さまに仮眠を取ってもらっていたそうです。育休期間中に家事の総量の多さを実感し、それを担ってくれる奥さまに感謝の言葉を伝える機会が増えたとのこと。また、妻と協力しながら初めての育児に向き合ったことが良かった、沐浴やおむつ交換にも苦手意識を持つことがなかった、とコメントしました。
夫婦で一緒に育児をスタートし、経験値の成長角度を揃えることが大切、と塚越さんは言います。同時にスタートすれば育児にまつわる経験のすべてを共有できるため成長度合いも揃えられる、すると途中でどちらかが遅れても追いつくことが可能になります。
取得期間については家族によって適切な長さが変わるため、相談して決めるのがいい、と塚越さん。「男性が育休を取っても役に立たない」という声もありますが、お二人の話を聞いていると、そうではないことがよくわかります。

育休を機に、仕事の効率化への意識がアップ。家族関係も良好に

育休取得後、仕事や家庭との向き合い方にどのような変化があったのでしょうか。足立さんは、帰宅後に家事をするし子どもをお風呂に入れてあげたいので、既定の時間内で効率よく仕事を進め残業を減らそうという意識が強くなった、と分析。また育休中に24時間赤ちゃんと過ごすのは幸せな反面、ストレスも大きいことに気づき、奥さまにリフレッシュしてもらう時間を設けるよう配慮するようになったそうです。
溝渕さんは現在も単身赴任中で、家族と会うのは休日。しかし、平日も定時退勤を目標にし、子どもが起きている時間に帰ってテレビ電話できるよう仕事の効率化を心がけているとのこと。育休中に家事力が向上して現在も前向きに家事に取り組んでおり、奥さまからも頼りにされているそう。奥さまからもお子さまからも「パパが家にいると安心する」と言われるなど、家族円満な様子がうかがえます。
こうしたお話に対し、塚越さんは「お二人とも、成果を落とさずに仕事の効率を良くしようと意識が変化しており、家庭と仕事の両立を実現している印象があります。家族関係について、足立さんの"子どもとずっと一緒に過ごすのは精神的にきつい面もある"という気づきが素晴らしく、第三者によるサービスなども活用して夫婦で過ごす時間を設けるのも関係性を維持するポイントと思います。溝渕さんは育児も家事も一緒にできるメンバーとして奥さまやお子さまの信頼を得ているご様子。子育ての土台となる信頼関係を育む機会として、育休を有意義に活用した証だと思います」と評しました。

その後、質疑応答の時間が設けられました。「育休中に気をつけていたことは何ですか?」という質問に対し、足立さんは、「育休取得の一番の目的である家事に取り組むこと」と回答。それに対し塚越さんは、「育休中は育児をするもの、という認識で家事に気が回らない方も多いが、出産時の疲労が十分に回復していないママの負担軽減のためにパパが家事を担うことは大切」と指摘します。また、「当事者以外(新卒や40~50代男性社員、LGBTQ+の方など)に育休取得の重要性を理解してもらうためには」という質問に、塚越さんは「人間をゼロから育てる育児は職業能力の向上につながるため、キャリア意識が高い方ほど育休への意識を持ってほしい。また、育休取得者が休んでいる間、チームで分担しながら生産性を維持する体制が確立すれば、誰もが休みを取れる環境が実現する。男性育休は職場改革の起爆剤になり得る」と答えました。

男性の育休取得については国が推進し、企業も力を入れる状況になっています。こうした状況をうまく活用し、多くの方にぜひ取得しよう、また職場の仲間が取得できるように応援しよう、という気持ちになってほしい、と塚越さんは言います。「お子さんがいる方は家族と過ごす時間を増やし、それ以外の方々もやりたいことが実現できる。そんなワークスタイルを実現するためにも、男性の育休をうまく活用していただきたいと思います」とセミナーを総括しました。

当日ご参加いただけなかった方や、もう一度視聴されたい方のために、期間限定でアーカイブ動画を掲載いたします。
ぜひご視聴ください。

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