2024.04.12

フォーラムレポート:誰もが活躍できる社会に向けて「Diversity&Career Forum」

『三井のオフィス』では、毎年3月の国際女性デーに合わせて、女性のキャリアに関するイベントを展開してきました。今年は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に先進的に取り組む企業のご担当者3名とゲストファシリテーターにジャーナリストの浜田敬子氏をお迎えしてトークディスカッションを開催。多様な働き方の実現と女性の活躍推進をテーマに、活発な意見交換が行われました。

<ご登壇いただいた皆さま>
■パネリスト
EY Japan株式会社
DE&Iリーダー
梅田 惠氏

大和証券株式会社
ダイバーシティ&インクルージョン推進室 室長
平野 友視氏

株式会社博報堂
博報堂キャリジョ研プラス 研究員
前田 将吾氏

■ファシリテーター
ジャーナリスト
前Business Insider Japan統括編集長 AERA元編集長
浜田 敬子氏

自身のキャリアとプライベートを合わせた多様な視点

会場となったのは、東京ミッドタウン八重洲カンファレンスです。ご予約枠100名の上限いっぱいのお申し込みがあり、広い場内はほぼ満席の状態で18時半よりスタート。オンラインライブ配信でも、たくさんの方に視聴いただきました。女性のキャリアや働き方をテーマとしながらも、会場には男性の参加者も少なくなく、この領域への社会的な関心の高まりを映す形となりました。

まずは登壇者の皆さまより自己紹介をいただきました。
今回ファシリテーターを務める浜田さんは、現在はフリーランスのジャーナリストとして活躍中。もともと新聞社の出身で、AERAの編集長を経験されました。女性の働き方や生き方、ダイバーシティの問題など長く取材を重ね、『男性中心企業の終焉』などの著書も。経験を活かし、ダイバーシティ関連イベントなどで多くモデレータを務めています。

梅田さんは、IT業界での広報や人事経験を経て、50代でEY Japan株式会社に転職。「30代の頃はがむしゃらに働き、ワークワークバランスという感じでした」とキャリアを振り返られました。DE&Iの専門職として15年以上のキャリアがあります。現在は、筑波大学で教授としても教鞭を取っています。プライベートでは妹の娘を養子に迎え、田舎暮らしを楽しんでいます。

平野さんは、大手銀行に新卒入社した後、コンサルティング会社を経て、現在は大和証券のダイバーシティ&インクルージョン推進室に勤務されています。中学2年生の息子を持つワーキングマザーでもあり、育児と仕事を長く両立してきました。「当時はテレワークなどもなく、育休からの復帰直後はワンオペ生活が続き、かなりハードでしたね」と経験を語られます。

博報堂キャリジョ研プラス研究員の前田さんは、長崎県出身で大学進学を機に上京し、2020年のコロナ禍に社会人をスタート。マーケティングやプランニング分野に従事するかたわら、博報堂キャリジョ研プラスに初の男性メンバーとして自ら手を挙げて参画し、DE&Iをめぐる社会課題の調査に当たっています。

まだまだ変革が必要な、女性のキャリアをめぐる環境

前半では、パネリストの皆さんより自社で推進するDE&Iに関する活動をお話しいただきました。

まず前田さんより、博報堂キャリジョ研プラスが実施した調査結果についてご紹介があり、それを起点に意見を交わしました。最初に示されたのは、男女間の管理職比率に焦点を当てたグラフです。「男性では、正社員の割合が圧倒的に高く、年齢が上がるにつれて管理職の割合も増えるのに対し、女性にはその傾向が見られません。まだまだギャップが大きく、平等とは言えない状況です」と前田さん。

また、管理職を目指す意向調査でも男女差が明らかに。女性が管理職になりたいと考える比率は男性より20ポイント以上低いことが示されました。背景には、前例が少ない環境で管理職を務める女性の苦労を見てきたために、昇進が高いハードルに感じられている可能性を前田さんは指摘します。

平野さんは「確かにその感覚はすごく理解できます。これまで管理職は男性が中心で、24時間働くスーパーマンのようなイメージが強かったために、女性がリーダーになるには大変な自己努力が求められると感じることがありました」とコメント。これを受け、梅田さんが「男女雇用機会均等法が施行されたばかりの私たちの時代は、女性は男性の2倍、3倍働かないと認められないと言われて、がむしゃらに働いていました。今思うとずいぶんな言われ方ですが、それがその後、若い女性を怯えさせることにもつながってきたのだと思います」と話し、まだまだ社会的風土を変えていく必要性があることが確認されました。

前田さんはさらに、ワークライフプランに関する調査結果も共有。「最近では、男女ともに子どもが生まれた後はより緩いペースで働きたいと考える人が増えています。また、若い男性の間で、出産や育児関連の制度が整っている会社、女性が多く活躍している職場で働きたいという意識が高まっているのも示唆的だと思います」と若年層に広がる変化を示しました。
浜田さんからも「最近Z世代を取材していると、転勤を避けたいという若い男性に多く出会います。企業も今までの人事制度では人材を集められないことに気づき始めています。女性よりむしろ男性のこうした意識変化が、会社が変わるきっかけになるかもしれないですね」と意見を述べられました。

DE&Iを取り巻く課題と、各社で工夫される取り組み

続いて、梅田さんよりEY Japanの取り組みについてご紹介いただきました。現在EY Japanが注力しているのが、課長クラス、課長クラス及び管理職一歩手前の女性に向けた半年間の職階別リーダーシッププログラム(研修)です。一方で、より権利を多く持つマジョリティ側に対しても、格差の意味や自身が持っている特権への意識を促し、マイノリティへの支援を行っていくための研修を実施しています。

浜田さんもまた、女性に特化したプログラムの意義について着目し、「女性だけの研修が本当に必要なのかという声を聞くことがありますが、私は過渡期には絶対必要と考えています」とコメントします。梅田さんは「男女一緒の研修では、女性が書記や書類作成を担当し、男性がプレゼンを担当するなどいつの間にか分業が進んでしまうことがあります」と指摘した上で、あえて女性だけの研修として能動的な参加を促すこと、継続的な研修により参加者同士のネットワークを形成することの重要性を語りました。

また、職場でマイノリティとなる女性はロールモデルが少なく、スキルアップの機会が男性に比べて得にくいという点にも、話題が広がりました。「部下・後輩が女性だと、セクハラと思われそうでうまく関われないという男性がいたり、『育児中でかわいそうだから、タフな仕事はお願いできない』など過度な配慮がされることもあります。だからこそ女性向けの研修が必要ですし、研修の中でロールプレイなどを通して自信をつけていく人が多いです」と梅田さん。

引き続き平野さんからも、大和証券で進められるワークライフバランスやDE&Iの取り組みが紹介されました。同社では、2005年に女性活躍推進チームを発足し、仕事と育児の両立支援、キャリア支援を展開しています。

経営層と社員が直接対話するD&I推進委員会も、大和証券らしさを表したものになっています。「ダイバーシティをめぐり今現場で何が起きていて、どんな課題があるか、社員の意見を経営が直接聞く機会としています。その場で施策が決定されることもあり、有用な委員会だと思っています」と平野さんは話します。

近年では、男性の育児参画推進に注力し、2017年には育休取得率100%を達成。現在は、2週間以上の育児休暇の取得が必須となっています。「ただし、育児はそんなに短期間で終わるものではないので、その後働きながら育児と仕事を両立していくという意識を、男性にも根付かせていく必要があると思っています」と平野さん。前田さんも共感を示し、「育休は、この日数だけ取ればいいということではなく、長く続く育児生活への体制を整えて、ちゃんとスタートを切れるようにすることが目的なのだと感じました」と語りました。

女性活躍推進は、誰もが働きやすい職場づくりとも重なる

フォーラム後半では、「女性活躍推進の課題解決」をテーマにさらに深掘りしたディスカッションを展開しました。

日本がジェンダー後進国であることを踏まえ、その根本的な問題がどこにあるかという浜田さんからの問題提起に、梅田さんは「ずっと男女二元論で来たことが溝を深くしている」と指摘。女性活躍が進む企業は、LGBTや障がい者への対応も先進的であることが多いもの。ダイバーシティの観点から一気に並列で推進していくことで、不公平感や逆差別をいう声がなくなっていくことが、ご自身の経験を踏まえて紹介されました。

一方、浜田さんは「『ダイバーシティ』の言葉で総括すると、ともすると女性への取り組みが薄れ、後退してしまう例もある」ことを示唆します。これには梅田さんも同意し、「こうした取り組みは自転車と同じで、漕ぐのを止めると倒れてしまいます。女性が先、障がい者が先など順番をつけるものではなく、同時にやり続けることが大切なのでしょう。女性活躍推進で役立った手法が、LGBTの理解促進で応用できるなど、相互作用が働くこともあると思います」と話します。

男女を二項対立させないために、前田さんからは「どちらかというと、変わるべきなのは男性の方なのかもしれません。『男性であること』がある意味で特権となり、下駄を履かせてもらっている側面を認識した上で、責任を果たしていくべきなのでしょう」と意見が述べられました。梅田さんはこれに対し、「インサイダー(多数派)とアウトサイダー(少数派)の間には見えない壁がありますが、インサイダーは自分が壁の内側にいることに気づきにくいもの」と話し、それを意識できるような機会をつくっていく大切さに触れました。

Q&A:参加者から寄せられたさまざまな声

ディスカッションの後はQ&Aの時間に。ピックアップされた質問に対し、ご登壇の皆さまが自身の立場や視点を活かして回答しました。

1つ目は、「当社では、異なる業種や部署に画一的な制度が導入されており、DE&Iの考え方に合わないと感じていますが、どう訴えれば役員に理解してもらえるでしょうか?」という質問です。これに対し、梅田さんは「調査結果などを分析して、客観的なデータで見せる方法をよく用いています。また、上司の皆さんが受け入れやすいようポジティブな例を併せて共有し、対立を避けて共感を得ていくことも大切だと思います」と回答。ご自身が体験したエピソードを交えてお話しくださいました。

2つ目は、「他社との競争もある中、いかにバランスをとり残業時間の削減などを進めていくべきか」という質問です。平野さんは「成果にコミットできるのであれば、働き方は柔軟に変えていく」という前提の重要性に触れた上で、「当社も最初は社内の反発が強かったですが、『こうでなければ』と思い込んでいた既存のやり方は、一歩引いて見ると意外に別のやり方でもうまくいくことが多いです」と話します。また、大和証券で励行される19時前退社や、夜の会食から昼の会食への切り替えは、経営トップが率先して行ったことで定着が進んだ点もあらためて紹介されました。

3つ目は、「DE&Iは重要ながら、道のりが困難に感じています。改善のためのアイデアがあれば教えてください」という質問です。これを受け、前田さんは「DE&Iと一口に言っても会社や業界によって事情が違う中、全部をやろうとすると手に負えないと感じてしまうと思います。まずは社内を丁寧に調査し、自社の課題を明らかにすることをファーストステップとしてはいかがでしょう」とアドバイス。さらに、社内を動かすために、データやファクトを説得材料として活用する大切さにも、他の登壇者を交えて話題が広がりました。

最後は、「女性活躍推進をテーマにしたイベントへの男性の参加率を高めるためには?」という質問です。男性の関心をダイバーシティに向けるためのアプローチとして、浜田さんは「ダイバーシティ経営のポジティブな面を言ってもあまり響かない場合、同一性のリスクを伝えると途端に皆さんの反応が変わることがあります」とアドバイス。同質的な男性ばかりの職場では、前例を踏襲してしまう、新しいアイデアが生まれない、不祥事が起きやすいといった状況があり、それを避けるためにも女性活躍に意義があることを指摘されました。

最後は、パネリストの皆さまより、フォーラムの参加者に向けたメッセージを一言ずついただきました。

あっという間の1時間15分。各方の体験談を交えながらのお話には、参加者の皆さまが今後の働き方や職場環境を見直していくヒントが多く含まれていたのではないでしょうか。『三井のオフィス』では今後も誰もが活躍できる社会の実現に向けて、さまざまなイベントや情報発信を続けていきます。

~追加質問コーナー~
お時間の都合上フォーラム当日にお答えできなかったご質問についてパネリストの方々にいくつかお答えいただきましたのでご紹介いたします!
下記よりご確認ください。
【いただいた質問のQ&Aはこちら (PDF)】

当日ご参加いただけなかった方や、もう一度視聴されたい方のために、期間限定でアーカイブ動画を掲載いたします。
ぜひご視聴ください。

「&BIZ」では、スポーツイベント、キャリア形成・介護・育児にまつわるセミナーなどを開催し、『三井のオフィス』で働く皆さまに毎日の暮らしをより豊かにする方法を提供しています。今後も様々なイベント・キャンペーンを企画してまいりますので、&BIZ Webサイトから是非ご参加ください!

「育児と仕事の両立セミナー」の開催レポートはこちらから!

column