2016.12.27ライフワーカー

仕事があって家庭がある。どちらもあることの幸せを感じて、前向きに生きる。

COMMONS PAGEでは、ON/OFF問わず好きと思えることに取り組み、『三井のオフィス』でいきいきと活躍するあの人の1日にレンズを向け、紹介していきます。
今回は、1962年に創立された富士ゼロックス株式会社で、知識経営コンサルティングを手掛ける価値創造コンサルティング部で働く久保田弥生さんです。「Sexy-Works Stylist」という異色の肩書きを持つ彼女の、「知を探求する」暮らしを取材しました。


――富士ゼロックス入社からの遍歴を教えていただけますでしょうか?
1996年に新卒で入社しました。
地元以外のエリアに配属となる制度によって、東京出身であった私は、まず3年半ほど名古屋勤務を経験しました。東京に戻ってからは、大手企業のお客様にシステムを販売する営業を担当しました。

2年半くらいたった頃、名古屋時代の先輩との飲み会で、現在の上司である仙石から「面白い部署があるから、遊びに来ないか?」と誘われました。知識経営コンサルティングを手掛けるKDI(Knowledge Dynamics Initiative)という部署だったのですが、オフィスがあったのは、以前は社内のスポーツジムとして利用されていた場所で、エアロビ用の大きな鏡の前にあった巨大な三角のテーブルを囲んで、なにやら楽しそうな打ち合わせが行われていました。

しかも、その場には、私が以前から傾倒していた経営学の先生が同席されていたのです。
一緒に仕事がしてみたい!と思い、公募で手をあげて転属し、今に至っています。





――具体的なお仕事の内容をお伺いできますでしょうか?
お客様にいらしていただいて、組織のビジョンを描いたり、課題解決に向けたワークショップを開催しています。
例えば、現在は、フューチャーセンター・チャレンジというプログラムを推進しています。
「今日の事業が成り立つのは、過去の頑張りによるもの、それでは未来のために、今頑張るべきことはなにか」ということをお客様と一緒に考えています。

ビジネスの現場では、現状維持のための仕事に没頭しがちですが、私たちの場に来ていただいたときには、いったん日常から意識を切り替え、社会や自分たちをどう変えていくか、青臭い議論ができるよう心がけています。
「未来の実践者」と呼ぶ外部スピーカーを招き、異業種の5社とわが社の6社とで彼らとの対話を重ね、未来を変えるためのアクションを話し合っています。お客様同士がつながり、次の社会をつくる、そのためのプラットフォームとなることが目標です。


――今のお仕事の魅力はどんなところにあるのでしょう?
知的好奇心がくすぐられますね。
面白くて尖った人々に出会い、それをまた人に伝えたいと思える話に出会えますから。

たとえば、今日はラジカセを部屋中に積み上げた、コレクションの巣窟のような場所で、家電蒐集家を名乗る方にお会いしてきました。
クラウドで音楽を楽しむ時代の流れに抗っているのかと思ったら「デジタル化の利便性の一方で、失われたものもいっぱいある。触ることでうまれる楽しい感覚が今の機械にはない。触覚など、人間本来の感覚を呼び覚ます仕掛けを、今の技術でどう再現できるのか」というのがその方のテーマでした。とても刺激を受けました。

このような知的探求の喜びをお客様にご紹介して、化学反応を促す楽しさがあります。毎日の仕事を通じて、自分も元気になりますね。


――「Sexy-Works Stylist」というユニークな肩書きには、どんな意味が込められているのでしょう?
私たちのチームメンバーは、一人ひとりが個性的なビジネスタイトルを持っています。
その背景には、もはや部長とか課長といった役職で仕事をする時代ではない、という考えがあります。
知を生み出すことの重要性はさらに増し、想いをもって行動する人がムーヴメントを起こすだろうと私たちは考えます。

では、私の想いはなんだろう?と考えたとき、一人ひとりが自分に合った働き方を自由に選べるということを伝えたいと思い、「ワーク・スタイリスト」という肩書きを思いつきました。
でも、それではインパクトが足りないと上司に言われ、私たちのバイブルの一つでもあった、トム・ピータースの著書『セクシープロジェクトで差をつけろ』に驚きと共感を覚えていたことから、「セクシー」を頭に掲げました。「仕事はセクシーである」という考え方が、カッコいいと思ったのです。


――久保田さんは、どんな時に仕事に醍醐味や喜びを感じますか?
お客様のプロジェクトやプログラムが終わった時に、人が繋がって、何かを持ち帰って貰えたなという手応えがある時でしょうか。
それを受けて、さらに「社内でこんな部署、プロジェクトが立ち上がりました」というようなことを後から聞いて、手応えを感じたことも。

以前、海外のナレッジマネジメントの先進例を訪ねる「ナレッジ・ベンチマーキング」というプログラムのコーディネイトを手掛けました。
海外との交渉など、初めての経験で苦労も多かったのですが、真面目に取り組んで「よし、計画がまとまった!」と思っていたら、「面白くない」と上司からひどく怒られたのです。
この一件で「セクシーな仕事をするには、もっと遊び心が必要なんだ」と学び、遊びの要素を追加していきました。

モンブランに登ったり、サーカスを観に行ったり、メジャーリーグを観戦したりと、学びも遊びも妥協せず詰め込みました。その結果、朝4時起きで移動するなどハードなプログラムになりましたが、参加者の方々にも楽しんでいただけました。
ツアーを通じて変化が大きかった人を、参加者同士で投票し合おうという企画を仕掛けたところ、私自身を表彰していただいた時には感激しました。頑張ることの意義を痛感しましたね。


――仕事に対するモットーを教えていただけますでしょうか?
当社元会長の故小林陽太郎氏の言葉として有名ですが「ビジネスを成功させるために必要なABCDE」の格言がいつも頭にあります。

Aspire(大志を持ち)、Believe(成功を信じ)、Commit(本気で取り組み)、Do(計画を行動に移し)、Enjoy(それを楽しむこと)を念頭に、毎日の仕事に取り組めるように努力しています。
特に、Aspiration(大志)から仕事が始まるって、素敵じゃないですか。
洗練された仕事より、想いのある仕事を大切にしたいですね、そうじゃないと元気が無くなってしまいますから。


――仕事を楽しく、円滑に進めるために工夫していることはありますでしょうか?
「外に出て遊びなさい」というのが上司の持論でした。オフィスで真面目に仕事をしているだけでは、広がりも変化も生まれません。

機会あらば新しい人に会いに行って「何かあったらお願いします!」とお声がけするようにしています。
このチームでは、組織的に「ぶらぶら活動」を推奨しています。何気ない出会いから、新しいことが始まることもあるのです。


――お仕事のモチベーションが上がるのは、どんな瞬間でしょうか?
「降りてきた!」 みたいな答えが見つかる瞬間がいろいろあり、その一つ一つがすごく気持ち良いですね。
机上ではあまり閃きは降りてきません。
家事をしている時とか入浴中とか、子供がまだ寝ている間の早朝仕事中とか、そういった時にふと降りてきます。


――集中力を持続させるために、注意している点はありますか?
なるべく歩くようにしています。
この前も、忙しすぎて周囲に当たってしまっているなと思ったことがあったのですが、30分ぐらい早足で歩いたあと、カフェに立ち寄り気持ちを整理しました。

その後は、前向きな気持ちで仕事に向かえましたね。場所を変えてみたり、体を動かすことも、集中力を高めるのに効果的だと思います。
そういうことも考慮して、歩けるようにリュックにもなる鞄を愛用しています。





――毎日欠かさず行っているルーティンはありますか?
早起きです。4時起きの日もあります。そもそも子供と一緒に22時に寝ているので、苦にはなりません。
唯一誰にも邪魔されない時間が4時〜6時の間で、日によって仕事をしたり、本を読んだり、溜まった家事を片付けたりなど、好きなことができる貴重な時間として重宝しています。


――これだけは手放せないアイテム、ずっと使っている仕事道具、愛用品などはありますか?
スマホのカメラ機能をよく使っています。
お客様と対話しながら、ボードにラフスケッチする、ということが多いので、対話の記録として、なんでもまずは写真に撮っておきます。スマホのライブラリーには、そうした仕事の写真と、プライベートな子供の写真が混在していますね(笑)。

他にはノートも手放せません。
ノートでも、ラフスケッチして後でパワーポイントで清書する、ということが多いので、横長にして使ってます。


――ストレス発散の方法は、どのようにしていらっしゃいますか?
出産前は、とにかく体を動かすことが好きで、マラソンが趣味でしたが、いまは子供の合唱を観に行くことがストレス解消になっていますね。
子供たちのピュアな歌声を聴いていると、心が洗われます。上達し、成長する姿に、つい涙してしまいますね。





――今の会社で、気に入っている点は何でしょう?
子育て中ということもあり、ありがたいことに在宅勤務も認めてもらっています。
実は、子供たちのそばにいて、家で仕事をすることに、若いころからあこがれていたんですが、今、まさにそれを実現できている、と実感し、感謝しています。


――「働くこと」と「育てること」、両立は上手く出来ていますか?
どちらも完璧に両立させることは不可能なので、自分自身、ある程度鈍感になれるように努力しました。
やれるだけやったら、あとは「なるようになるさ」という鈍感力です(笑)。


――久保田さんにとって働くということは何か、教えていただけますでしょうか?
家庭をもって、仕事と家庭、それぞれの良さが見えるようになりました。
仕事が忙しいからといって、単純に「家事は無駄な仕事だから、できるだけ短縮したい」というものではないな、ということが分かってきたのです。
家庭での生活を大事にすることで、なにを目的として仕事をし、価値を生むのか、見えてくることがあります。仕事の意味がシンプルになる、という感覚です。

仕事と家庭の行き来というか、両方があってこその生き甲斐をもっと広められたらいいですね。
自転車で子供たちを保育園に送り、それから出社する毎日は、慌ただしく大変ですが、それが幸せでもあるのかなと感じています。



久保田弥生
富士ゼロックス株式会社
中央営業事業部 価値創造コンサルティング部 Sexy-Works Stylist
1996年、富士ゼロックス入社。三年半にわたる中部大手営業部勤務を経て、東京営業事業部に異動。システム営業に携わったのち、社内公募でリサーチ・コンサルティングを行うKDI(Knowledge Dynamics Initiative)に異動。現在は、大手顧客を担当する中央営業事業部のコンサルティングチームにて、知識経営のコンサルタントとして活動中。


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