2016.07.27ライフワーカー

面白法人ですから、 楽しむことが何より先決です!

230名の社員を抱え、さまざまな「日本的面白コンテンツ事業」を手がける株式会社カヤック。そのCEOを務める柳澤大輔さんは、遊び心と含蓄に富んだ発言、そして一挙手一投足に「カヤックとはこういう文化」というアイデンティティがひらめきます。

ベイエリアを見晴らす横浜三井ビルディングの高層階が、鎌倉に本社を構えるカヤックの"ヨコハマ"展望台オフィス。自ら案内しながら、面白法人の面白法人たる由縁について、話してくれました。





――面白法人カヤックという会社の代表として、柳澤さんは現在具体的にどんなお仕事にどんな風に取り組んでいらっしゃるのか、教えて頂けますか?
まず現場の仕事という意味では、経営はもちろんですが、採用というのが大きなものとしてありますね。たとえば、いくら多忙であっても最終面接は必ず全員にお会いします。あとは会社のブランディングですね。つまり人事部とコーポレート、ブランディングというところには結構関わってやっていますね。経営の部分は、投資の判断や各事業部長との戦略会議、いろんな企業の方とお会いしたり事業提携など、会社の未来に対しての考え方を見定める日々です。外出も多いため、毎日オフィスに出社できるわけではないけれど、忙しく働いていますね。

――カヤックで働く醍醐味や喜びは、どんなところにあるのでしょうか?
面白法人っていうちょっと型破りなコピーを付けたんで、そこですかね(笑)。その名に対して、どう答えていくかという日々の挑戦で、時々は「面白くないよ」とも言われたりしながら、自ら面白がっていくようにしています(笑)。


――お仕事へのモチベーションはどのような時に上がりますか?
みんなが活躍している時でしょうか。みんなの活躍が見えてくると、すごいなあ!っていう盛り上がりがありますね。最近だと、入った新卒がいきなり活躍したりとか、そういうのはすごく嬉しいですよね。


――「アイディアをいっぱい出して、面白がり屋になろう」と語っていらっしゃいますが、アイディアを枯らさない秘訣があれば教えてください。
アイディアは本来、枯れないものだと思うんです。行き詰まっていると出なくなるとかありますが、僕らはそうならないように努力しています。
それをウチでは、主にブレインストーミングという手法でやるんです。カヤックはブレストを極めることに力を入れています。ブレストは一言で言うと体質を改善するんです。ブレストばっかりやっていると、脳がブレスト脳になるというか。それは、何かあった時にどうやって解決しようかっていう構造に脳がなることなんですけど。大事なのは、数をとにかくたくさん出すっていうところなんです。否定しないっていうルールが一般的ではありますが、それはあまり気にしていなくて、とにかく100個アイディアを出そうよっていう風にしています。この、数を出す方の脳しか使わないのがポイント。これを繰り返していると、自然とアイディア思考になり、昼ごはんを食べていてもなぜかブレストになっちゃうクセが。そんなトレーニングを日々しているのが面白法人だと実感しています。特徴のある会社は、何によってその特徴がもたらされているかっていう最たる遺伝子のコアみたいなものがあって、カヤックの場合、それがブレストに当てはまりますね。つまり、ウチの特徴は「面白法人」っていう言葉と「ブレスト」、この2つにあると思います。





――ブレストにおいて大切な要素はなんでしょうか?
たった2つしかなくて、まず数を出すということを指標において集中してやることです。すると、いいアイディアを出すというのは、どうでもいいことになってくるんですね。必死に数を出すことに集中するから、99%はしょうもないアイディアになりますが、時々いいことが出てくる。でも究極を言うと、実は1個も出なくてもいいんですよ。なぜならカヤックは面白法人です。面白く働くということを重視しているので、楽しく働くためだけにブレストをやってもいいというのが極論としてあるんです。仕事に繋がらなくてもいいというくらいの覚悟でやってます。
2つ目のポイントは、「乗っかる」ということ。ブレストの醍醐味は何人かで一緒にやって、一人でやる成果を超える成果をみんなで出すという点にあります。そうすると、他人の意見に乗っけていかないといけないので、まず他人の意見をしっかり聞くようになります。他人のアイディアに重ねて自分もアイディアを出さなくちゃいけない。今度はそのアイディアを改善するアイディアが出てくるという具合に、連想ゲームのような感じになってきます。つまり、人による化学反応でアイディアが出てくるんですね。自分だけでは思いもつかないようなアイディアが出るというのが、ブレストの醍醐味なんです。


――ところで、仕事と家庭はどんなバランスで向き合っていらっしゃるのでしょうか?
まず境目がないですね。OFFという概念もないです。ただ、起業家の中ではまともな父親だと自負していますが、子供もいい子に育っているし......。


――ご趣味は?
サーフィンです。サーフィンは「動的な瞑想」というか、頭を一回リセットする作業を経営者は誰しもやっていると思うんですけど、瞑想であったり、運動であったりと。でも「静的な瞑想」っていうのはなかなか難しい。雑念が湧いてきちゃうので。身体を動かしてやって、いったん頭の中を真っ白にしてやるっていう方がやりやすいので、それの一つだと思います。いったんリセットすると、またフラットな状態になる。何かすごい悩んでることがあったとしても。そうするとまた打ち手が増えてくるので、まずは深刻にならないというか。まず動いてしまえと。よく、「海で何か思いつきますか?」とか聞かれるんですけど、何にも思い付かないですね(笑)。頭が真っ白になるだけです。





――御社も関わる「カマコン」について、活動内容を教えて頂けますか?
もともと面白く働くっていう人を増やそうというときに、カヤックは「つくる人を増やす」という経営理念があったんです。会社をつくる側の人になればどんどん楽しくなっていくから、それを知る機会を積極的に提供しようということで。いきなりはできないでしょうから、会社の課題でみんなでブレストをするんです。ブレストを一生懸命やっていると、自然と体質がつくる人側になってくるし、つまりアイディアを出すということは、自然とつくる人になるということです。問題が起きた時に、文句ばっかり言って終われないので、さてどうやって解決しようと考えるんです。
そんなことを地域活動にも生かそうとしたのが、カマコンだったんですね。つまり、この地域をどうやってつくるのかというのを面白がることで、こういう風なところをこの町はもっと良くしたらいいよねというプロジェクトにして、みんなでアイディアを出し合っていくためのブレストをやるんです。そうすると、どんどんプロジェクトが生まれ、自分が町をつくっている感覚が生まれ、もっと町が好きになっていくのではないかと考えたわけです。
4年間やって、防災のイベントだったり新たな事業だったりといったことが40プロジェクトくらい生まれてきましたね。市長にも参加していただいたり、活動の範囲が教育業界にも広がったり、カマコンの仕組み自体が面白いっていう評価になって、今では同様の取り組みが全国8カ所くらいにまで拡大してます。福岡とか岩手とか。白馬でもやってくれています。

「今昔写真」っていうプロジェクトがあるんですが、そこでは古い写真と新しい写真を比較するアプリを作りました。
昔と今を比べるとどう見えるか、という「今昔写真」の発想のもとになっています。最初は風景写真だけだったんですが、そこに人がいたらもっと面白いよねっていう話になり、その人の若い頃の写真と今の写真を見比べられるようにしたり、そんなアプリです。でも、単にアプリを作るだけじゃなく、リアルなイベントもやりましょうと。アプリはあくまで格納場所にしておいて、実際はおじいちゃんおばあちゃんに昔の写真を押入れから探して持ってきてもらって、そこに地元の高校の写真部の人たちが待ち構えていて、一緒にペアになって、当時の話を聞いて、持ってきた写真の場所に一緒にピクニックしに行って、同じ構図で撮る、そこに当時のエピソードも入れてアプリに格納するっていうイベントをやったんです。それが年に3、4回行われているんですけど、そうすると世代間交流も進み、みんなで後で見れちゃうみたいな、そういうプロジェクトがボコボコ生まれてるっていうのがありますね。


――最後に、自分の中での仕事に対するこだわり、「ここだけは譲れない!」といったものはありますか?
やっぱり面白法人ですから、面白く働くということでしょうか。でも実はそれが一番難しいんですよ。実際にはいろんなことが起きてきますから。それと、自分がつくってるもの、関わってるものは細部までこだわるほうですね。だけど、社員がつくってるものも、途中で見ちゃうとこうしたいなっていうのが出てくるから、あえて見ないようにしています。



柳澤大輔(やなさわ・だいすけ)
面白法人カヤック 代表取締役CEO
1974年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントを経て98年、面白法人カヤックを貝畑政徳、久場智喜と3人で設立。本社を鎌倉に置き、個性あふれるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する。

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