2017.05.16

経沢香保子さんが語る、 新たな社会インフラ構築への想い。

注目の女性起業家であり、テレビのコメンテーターとしても活躍されている経沢香保子さん。
ウェブ版限定インタビューでは、女性の社会進出を促進するために社会が一丸となって取り組むべき課題、そしてご自身の使命感などについて語っていただきました。

今のままでは乗り越えられない壁

毎朝、子供が起きる前に考えごとをしながらメモをとる「一人ブレスト」の時間を大切にしています。
朝の方が発想も湧きやすいですね。女性の仕事とライフイベントの関係についてもよく考えます。

戦後日本の経済成長を支えてきた終身雇用システムは崩壊し、お父さんは外で仕事、お母さんは家で育児という典型的な家族のあり方も過去のものとなりました。
「ダイバーシティ」という言葉に象徴されるように、より多くの価値観が認められるようになり、女性が結婚、出産した後も社会に出て、自分らしく生きる「自由」も「権利」も増えたのです。
それでも、今のままでは乗り越えられない壁があります。

男性と女性に能力の違いはないというのは、多くの企業でも認められている事実です。
政府も女性の活躍を推進するスタンスになりました。でも、妊娠、出産だけは別問題。

男性は父親になっても、仕事に集中して結果を残せば許されるところがありますが、働く女性は出産すると24時間、365日育児に追われながら仕事もすることになり、心身共に疲れてしまいます。
家事・育児を全て負担しているという自負から夫に対してつい高飛車な態度をとってしまうこともあるし、夫は負い目から言いたいことも言えない場合がある。
家庭の雰囲気が悪くなれば、子供にも良いとは言えません。

家事や育児を夫婦や社会でシェアしていけばいいのですが、その概念が日本にはありませんでした。
その概念を変えていく方法のひとつとして思いついたのがベビーシッター制度。私は26 歳で最初の会社を立ち上げましたが、 上場させるまでのいちばん大変だった時期と出産・育児が重なりました。
両立に悩み、仕事を諦めかけたこともありますが、ベビーシッターさんに子供たちを預けることで何とか乗り切りました。
そのとき、育児も仕事と同じようにチームで役割分担すればいい、一人で抱え込まないで、必要に応じてプロに頼めばいいと気がつきました。
でも日本ではまだベビーシッター文化が浸透していなくて、料金は高く、手続きが煩雑。セレブのものというイメージも。

だから、「ベビーシッターを誰もが気軽に、安全に、安心して利用できるインフラを整備し、社会貢献したい」と考えるようになりました。
また、育児と同じように仕事もチーム化する必要があると気がついたのもこの時期です。

それまで、私が起業した会社は個人商店の延長のような会社で、全てに私がかかわっていました。
でも、出産を機に役割分担をしっかり決めて、スタッフに任せる仕事を増やしていきました。



子供に教えられたこと

チーム力の大切さと共に出産・育児が私に教えてくれたことがもうひとつ。
それは「大事を為すためには時間が必要」だということ。

会社員時代は自分が頑張れば結果にすぐ表れたし、何事にも手応えを感じる人生でした。
でも起業すると社員の採用から結果が出るまでに時間がかかるし、その間にはイライラすることもたくさんありました。

同じように子育てもすぐに結果がでるものではないし、思うようにいかないことの方が多いですよね。
親の言うことをなかなか聞いてくれないし。子育ても企業経営もマラソンですから、長いスパンで取り組まなければなりません。

母親からも「人生は思うようにいかないことの方が多いのだから、イライラしてはいけない」と諭されましたが、時間を費やすことの大切さを子供たちから教えてもらいました。

対立ではなく、共感の輪を広げていく

ベビーシッターサービスという、それまで日本ではあまり知られていなかったサービスを立ち上げるにときに、背中を大きく押してくれたのがヤマト運輸を創業された小倉昌男さんの著書『経営学』(日経BP社)です。
「サービスが先、利益は後」という信念を貫き、個人宅配の市場を切り開いた小倉さんは日本のインフラを大きく変えた方。

仕事でいろいろ悩んでいた時期にこの本に出会い、私は社会インフラを整備する会社を創業したいのだと悟りました。
ヤマトがあるから通販ビジネスが発展したように、キッズラインがあるから女性の社会進出が進んだと言われるような企業にしたいと決心しました。

私は男女問わず、一人一人が自立して自分の人生を自由に歩める社会になればいいと思っています。
ベビーシッター制度についてはご批判をいただくこともありますが、意見が異なってもそれを認め合って、お互いがより生きやすい社会を作っていくことが大事なのではないでしょうか。

私たちは、ときにユーモアを取り入れながらも真剣に取り組んでいくことで共感の輪を広げ、一人でも多くの方に応援される企業であることが重要なのです。
テンプスタッフ創業者の篠原欣子さん、『女性の品格』(PHP新書)の著者、坂東眞理子さんを初め、数多くの先輩が女性のための道を切り開いてくださいました。
私はその道をより整備することで、少しでも社会貢献できたらと考えています。

自分らしく生きるための環境を整える

先輩方からバトンを受け継いだ今の女性たちは、一世代前に比べてより自分らしく働き、生きるための環境が整っています。
それでも、仕事で結果を残せないと「だから女性は駄目なんだ!」と言われてしまうことが多いのも事実。女性はまだまだ男性以上に結果主義を求められています。

私は営業出身なので、結果を出せば周囲が自分の話をより真剣に聞いてくれることが分かり、励みにもなりました。
実力主義、結果主義を怖がらないでください。自分のセンスや能力を活かす仕事をしたいのなら、まずは目の前の仕事で結果を出すことが大切です。

結果を出すためには目標を明確にもつこと。目標が明確なら、今日やるべき仕事も明確になります。
日々の仕事とは結果という答えを導くために、コツコツ数式を解いて行く作業なのではないでしょうか。私は意外と得意です。 

本当に好きなこと、やりたい仕事を見つけるためには、まず何でも経験してみることです。
好きなことは降って湧いてはきません。食べてみなければ好きな料理は見つからないし、洋服も着てみなければ似合うスタイルも見つかりませんよね。

そして目標が見つかったら、言葉にして人に伝えることも大切です。
人に話すことで覚悟ができるし、協力してくれる人が現れるかもしれません。
夢のような話をして笑われるのが恥ずかしいとか、挑戦して失敗したら挫折しそうと悩む前に、とにかく言葉にして行動に移しましょう。

やりたいことを実現させて成長し、自分らしい人生を生きたいと思うなら、好きなことができる環境を自ら整えてください。




経沢香保子
1973年千葉県生まれ。
慶応義塾大学経済学部卒業後、 株式会社リクルートに入社。楽天株式会社勤務を経て、2000年、26歳のときにトレンダーズ株式会社を創業。
2012年当時最年少女性社長として東証マザーズに上場。2014年「女性が輝く社会」をミッションに掲げ1時間1000円〜、即日でも手配可能なベビーシッターサービス「KIDSLINE」をスタート。
新しい育児スタイルの提案などの育児支援を行い、日本にベビーシッターの文化を広めることを次のミッションとしている。『自分の会社をつくるということ』(ダイヤモンド社)他、著書多数。テレビのコメンテーターとしても活躍している。


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経沢香保子さんのトークショーを開催!

数々の苦しい経験を経て、日本に「ベビーシッター文化」という新しい社会インフラを浸透させようとしている経沢さん。
「失敗こそが、私の財産」と語り、常に前を向いて歩く経沢さんの生き方、働き方とは ?
参加した方全員が一歩前に踏み出せるようなトークショーですので、ぜひご参加ください。

テーマ

『七転び八起きの人生を、しなやかに生きること。働くこと。』


講演日時:2017年6月21日(水) 18時開演 20時終了予定
場所:WORKSTYLING 汐留
人数:COMMONS PAGE メンバー限定80名様をご招待

定員に達したため、受付は終了しました

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