2015.12.09

第8回「Tokyo Midtown Award」アート部門グランプリ受賞者インタビュー

2015年で8回目を迎えた「Tokyo Midtown Award」は、東京ミッドタウンが主宰するデザインとアートのコンペティション。明日を担う若き才能の発掘と応援を目的とし、第一線で活躍するアーティスト、キュレーター、デザイナーを審査員に迎えて開催されます。このコンペティションをきっかけに大きな飛躍を遂げたアーティスト、デザイナーもたくさんいます。また、実際に商品化された作品もあります。

2015年度は計1,566点の応募作品があり、10月16日(金)に14の受賞作品の発表が行われました。ここでは、アート部門のグランプリに輝いた田島大介さんのインタビューを掲載します。田島さんは1993年、奈良県生まれ。この春、愛知県立芸術大学を卒業したばかりの、新進気鋭の注目アーティスト。「五金超大国Ⅱ」と名付けられたグランプリ受賞作品は、194cm×336㎝の大きなキャンバスにペンで精密に描かれたビル群が見る者を圧倒するパワーを秘めています。
第8回東京ミッドタウンアワード2015

グランプリを獲得した感想はいかがですか?

「Tokyo Midtown Award」のアート部門は、立体作品が強いコンペティションだと思っていたので、ペインティングでグランプリを受賞できるとは考えていませんでした。実際、2次審査やプレゼンテーションの段階では手応えを感じませんでした。でも、最終審査で実際に審査員の方々が作品を観てくださったとき、想像以上にインパクトが強かったと言ってくださったので、それが結果に結びついたのかもしれません。
僕は、言葉でコンセプトを伝えるのが苦手で、プレゼンテーションはいつも苦労しています。でも最後は作品のクオリティを評価していただいたのだと思います。現代アートの前線で活躍されている方々が審査員だったので、その方々に認めて頂けたのは、とても光栄なことだと思っています。

グランプリ受賞作品は高層ビルが俯瞰でびっしり描かれています。「五金超大国」というタイトルに込めた意味は何ですか?

五金とは中国で金銀銅鉄錫、つまり金属の総称を意味する言葉です。ビルの看板にはハングルや漢字が描かれていますが、特定の街を描いたのではありません。描いたのは憧れや切望するものだけに囲まれた自分の心の居場所であり、自分が信じることができる世界の姿、心象風景です。自分自身の居場所や存在意義を見失ったとき、孤独や不安を満たしてくれる自分だけの世界に閉じこもりたいと願いました。

とても大きな作品ですが、間近で見ると繊細で細かい描写に驚きます。

8畳の部屋の一辺にちょうど収まる大きさなんです。使うのはつけペンと証券用インク。ペン先の摩耗率で描ける線の太さが異なるため、常に10本以上用意しています。

今の手法に至ったのはいつ頃ですか?

大学在学中です。彫刻を専攻していたので授業では立体作品を製作していましたが、並行してつけペンとインクでマンガも描いていました(※田島さんは大学在学中に講談社モーニング新人賞奨励賞を受賞している)。その流れで大きなキャンパスに細密画を描いてみようと思った。試行錯誤を繰り返しましたが、密度もスケールも上がってきたと感じています。
第8回東京ミッドタウンアワード2015

アーティスト田島大介をインスパイアしてくれる情報源は?

アートの最前線で活躍されている方の話を聞くのが一番だと思います。インターネットの普及で表面的な情報は簡単に手に入りますが、肝心なことは人に直接聞かないと分かりません。僕ら若手は特に。

意識しているアーティストはいますか?

村上隆さん、奈良美智さん、大竹伸郎さんなど活躍されている先輩の皆さんには刺激をもらっているし、意識はしています。あとやはり、草間彌生さんはやはり凄いですね。草間さんは日本を飛び出してニューヨークでスタイルを確立したし、ウォーホルなどにも影響を与えている。その作品からは、日本に対する反発心を強く感じますが、その点にも共感を覚えます。
僕も世の中に対する怒りが絵を描く根底にある。いっぽうで、怒りを覚えても、その社会に認めてもらいたいと願う自分がいるという自己矛盾、不甲斐なさも感じています。自分自身との葛藤の日々です。もっとおおらかになれればいいのですけど。でも、そんな自分だからこそ描ける絵があると思う。 海外ではオランダのRON VAN DER ENDEという彫刻家が好きです。

昔に比べ、今のアーティストにはビジネスのセンスも必要ですよね。

草間彌生さんもビジネスモデルはしっかり持っています。2005年くらいからアジアを中心にアートフェア、オークションハウスが一気に増えました。アーティストも自分の作品をどうやって売り込めばいいのか、そのためのノウハウを学ばなければいけない時代です。僕も10年後に自分の作品にどれだけの値段をつけるのか。それはしっかり考えています。

グランプリの副賞としてハワイに招待されますね。

ハワイ大学に1ヵ月くらい滞在して、作品制作をしたり、レクチャーを行ったりもします。お世話になっているキュレーターの方にも「まだ若くて世間知らずだから、もっといろいろな世界・景色をみる必要がある」と言われているので、いい機会だと思っています。これからはもっと海外に出て行きたいですね。欧米の洗練された都市より、アジアなどの雑然とした街で、もっとカオスを覗いて見たいと思っています。僕の作品もまだ、奇麗すぎるところがあるので。

将来の目標を教えてください。

海外でも活躍したいし、大きな美術館で個展も開催してみたいです。まだ作品数も少ないですが、このままいけば20年くらい先に実現できると確信しているので不安はありません。今のクオリティを維持していくこと、そして健康管理が大切ですね。長時間大きなパネルに向かうので腰を傷め易いからコルセットは必要ですね。大学を卒業してから外出する機会も減ったので、今はなるべく散歩するようにはしています。(了)
第8回東京ミッドタウンアワード2015

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