2023.02.21
組織を超えたつながりを深め、コラボレーションを促進する「共創」のための新オフィス
2021年2月、PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)は東京・大手町のOtemachi Oneタワーに新オフィスを開設。グループ各社が1拠点に集まることで「One PwC」としてのシナジーを高めながら、スタッフ間のコラボレーションを高める環境を実現しました。移転プロジェクトの責任者を務めたPwC Japan合同会社のマネージングディレクター・杉山優子さんに、オフィスづくりのコンセプトやこだわりについてお話を伺いました。
※インタビューはマスクを着用して実施しております。写真撮影のみ、マスクを外しております。
目次
- □グループ各社を大手町に集結し、顧客対応力を強化
- □コミュニケーションを活性化させるさまざまな工夫
- □DXの推進により「使いやすいオフィス」を実現
- □従業員が「おかえり」を感じられる空間を目指して
- □取材を終えて~「&Biz編集部」の発見ポイント
グループ各社を大手町に集結し、顧客対応力を強化
PwC Japanが入居するのはOtemachi Oneタワーの18~22階の5フロア。PwCコンサルティング合同会社、PwC税理士法人をはじめ約5,600名(2022年9月末現在)のグループ従業員がこの新オフィスに所属します。全面ガラス貼りで間仕切りのない開放的な雰囲気や明るい色使いのインテリア、各フロアをつなぐ内階段が同社のオフィスを特徴づけています。
移転決定は2019年春。「新オフィスを開設する最大の目的は、組織や部門を超えたやりとりを活性化し、One PwCを実現することでした」と移転プロジェクトリーダーの杉山さんは語ります。当時から、PwC Japanの主要顧客の多くは大手町エリアに集中。それまでPwCコンサルティングは丸の内、PwC税理士法人とその関連法人は霞が関にあるなど拠点間の移動が必要でしたが、各社が大手町に集結することでお客様への対応スピードを高めました。
杉山さんは「複数の移転候補先の中でもOtemachi Oneタワーを選んだのは、三井不動産のご担当者が、何年もかけて私たちのオフィスニーズをヒアリングし、それをビル開発に反映してくださったという背景もあります」と明かします。
今回の移転プロジェクトは、約6カ月間で基本設計を終えて工事着手にこぎつける短期集中型に。プロジェクトチームには、同社でパートナーと呼ばれる役員層が各部門から参画しました。決裁権を持つパートナーが定例ミーティングに加わることで「持ち帰って検討」が不要になり、その場でどんどん話を詰めていくことができたそうです。
徹底的なリサーチによる裏付けを重視するのも、コンサルティング業を営むPwC Japanらしさといえます。「この時間帯は誰がどこでどのデバイスを使っているか、どんな会議がどのようなスタイル、頻度で行われているかなど、本当に細かいことまでアクティビティ調査を行いました。それらを全面的に反映させることで、誰にとっても使いやすいオフィスにフォーカスしました」と杉山さんは振り返ります。
各フロアをつなぐ内階段。従業員同士の偶発的なコミュニケーションを生み出しています。
コミュニケーションを活性化させるさまざまな工夫
アクティビティ調査に並行し、社内では全従業員へのアンケートや経営層へのインタビュー、各職階から選抜した従業員によるグループワークを実施。「社内の声を拾っていく中で出てきたキーワードは『つながりたい』です。多くの従業員が、もっといろいろな人と関わり合って働くことを望んでいました」と杉山さんは語ります。導き出された新オフィスのテーマは「共創」でした。
19~22階には、執務エリアのほか、Co Creationエリアを配置。誰もが自由に使えて、各チームがそれぞれの業務を行いながらゆるやかに空間を共有します。ちょっとしたミーティングはもちろん、ここで数百人規模のオンライン会議が行われることもしばしば。
各階をつなぐ内階段もまた、Co Creationエリアの一部としてすれ違う従業員同士の偶発的なコミュニケーションを生み出しています。「内階段があることで社内の縦移動が増えましたし、そのぶん出会える人も増えて自分の広がりを感じます」と杉山さん。
また、新オフィスでは執務エリアの脇に「壁のない会議室」が備えられ、そこでどんな話し合いがされているか、近くを通る誰もが感じ取れます。「組織が大きくなるにつれて他部署の動きが見えにくくなる中、『他の人たちが何をしているかもっと知りたい』という社内の声に応えました。その後コロナ禍が広がり、奇しくもこれが感染対策としても有効に働きました」と杉山さんは語ります。
パートナー(役員層)の個室をなくしたのも同社ならでは。一般の従業員がパートナーとのコミュニケーションをとりやすくするもので、グループ代表ですら個室を持たないという徹底ぶりです。
18階では、お客様とのつながりに重点が置かれます。受付エリアはホテルのロビーのような雰囲気で、お客様が気軽に立ち寄ってミーティングできる空間になっています。そこから続くエクスペリエンスセンターでは、新たな顧客体験(エクスペリエンス)の提供を通し、お客様とPwC Japanの共創を促す場に。カラー変調できる照明に彩られたラウンジや、大型ディスプレイを備えたスタジオなどを完備し、ワークショップやセミナーをはじめ多様なニーズに応えます。
アクティビティ調査を実施し、社内の声に応えて「壁のない会議室」を設置。
DXの推進により「使いやすいオフィス」を実現
デザイン面では、明るく暖かい色を多用。新オフィス全体を「キャンパス」と捉え、19~22階は各階ごとに「スポーツ」「アート」「パティオ」「アカデミック」など内装のテーマをもたせたのはPwC Japanのこだわりです。例えば「スポーツ」を掲げた19階はカラフルで活気あるデザインを採用し、バスケットゴールを配備するなどユニークなインテリアになっています。
一方、見えない部分で同社が大きな投資をしたのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進でした。「オフィスの使い勝手を高めるためには、必要なデジタル機能が整備されていることが欠かせません。移転を機に、使用頻度の高い社内WEBサイトを集約し、勤怠管理からスタッフ情報の確認、会議室予約まですべてシームレスに行えるようにしたのもそのひとつです」と杉山さん。
フリーアドレスで働く従業員の正確な位置把握を可能にするシステムを導入。「例えばチームメンバーが私と直接話したいと思ったとき、私が今何階のどのエリアでいるかをスマホで検索でき、そのまま画面上で『今からそちらに行くので、ちょっと話せますか?』とメッセージを送ることができます」と杉山さんは社内のつながり合いを支える機能を紹介します。また同時にそれは、混雑エリアをリアルタイムで表示するため、コロナ禍の状況で密を避けるためのツールにもなっています。
「スポーツ」がテーマとなりバスケットゴールを配備。
従業員が「おかえり」を感じられる空間を目指して
「従業員が誇りに思えるオフィスになったと自負しています。『ここで働きたい』と思ってもらえる空間づくりは、採用活動で優秀な人材を獲得するためにも重要です」と笑顔を見せる杉山さん。
最後に、今後のオフィス施策の方向性を尋ねると「感染対策のためハード面ではタッチレス化を進めますが、ソフト面で大切なのは従業員へのインタッチを深めること。会わない・会えない期間を乗り越えていかに成長を促し、会社へのエンゲージメントを高めていくかを考える必要性があると感じています」との認識が示されました。
「出社を強要することなく、従業員の足をどのようにオフィスに向けていくか。やはり大切なのは『オフィスに来ると楽しい』と感じてもらうことだと思っています」という言葉通り、同社では現在さまざまなオフ ィスイベントの計画が進みます。「直近では、従業員の家族をオフィスに招いたファミリーイベントを企画しています。リモートワークが多いとどうしても会社への帰属意識は薄れがちになりますが、家族を積極的に巻き込んでいくことで従業員がPwC Japanへの気持ちを高めてくれればと思います」と杉山さんは話します。
個々の仕事はオフィスでなくてもできる今だからこそ、問い直されるオフィスの役割。杉山さんは「久しぶりにオフィスに来た従業員が、『おかえり』の雰囲気を感じ取れるような空間を追求していきたいですね。彼らが属しているPwC Japanという会社に、楽しく暖かい帰れる場所をいつも用意しておきたいです」と想いを語ってくれました。
組み合わせ自由な机を設置し、コミュニケーション活性化を促進。
取材を終えて~「&Biz編集部」の発見ポイント
要所要所にアートが取り入れられ、明るいインテリアに気分が華やぐPwC Japanのオフィス。内階段を彩るユニークなデザインは各階ごとに違っていて、これらはすべて全従業員に投票を求めて選出したアーティストの方々に描いてもらったのだそうです。空間にいつまでも愛着を感じてもらえるよう、従業員を巻き込んでいくプロジェクトチームの皆さんの工夫であり、「オフィスの主役は従業員ですから」と言い切る杉山さんの言葉が心に沁みました。
お客様との打ち合わせで利用可能なエクスペリエンスセンター。
Company Profile
PwC Japanグループ/複雑化・多様化する企業の経営課題に対し、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして総務における卓越した専門性を結集し、それらを有機的に協働させたサービスを提供。公認会計士、税理士、弁護士、その他専門スタッフ約10,200人を擁する。
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