2023.03.15
社内コミュニケーションを深め、生産性・快適性を高めるオフィスレイアウト改革
2008年より赤坂Bizタワー(東京・赤坂)に本社を置く株式会社INPEX(以下「INPEX」)。入居から14年を経て、2022年2月には全フロアでの大規模なレイアウト変更を実施しました。フリーアドレスやリモートワークを組み合わせたオフィス改革で、社員の柔軟な働き方を支える同社の取り組みについて、総務ユニット総務グループの3名のご担当者に話を伺いました。
※インタビューはマスクを着用して実施しております。写真撮影のみ、マスクを外しております。
目次
- □フリーアドレス化・ペーパーレス化を進め、オフィス環境を一新
- □空間利用を効率化するレイアウトの工夫とデジタルツール導入
- □多様な人との交流を促進するリラックス空間づくり
- □一層働きやすく、 チームビルディングに適したオフィスへ
- □取材を終えて~「&Biz編集部」の発見ポイント
八巻 幸治さん
バンクス マットさん
高柳 圭佑さん
フリーアドレス化・ペーパーレス化を進め、オフィス環境を一新
赤坂Bizタワーに在籍するINPEX社員は約900名。「今回のレイアウト変更の背景には、コロナの感染拡大を機に在宅勤務やフレックスタイムを加速させ、働き方が大きく変わったことが挙げられます」と話すのは、当時プロジェクトを担当した、総務グループマネージャー・八巻 幸治さんです。
コロナ収束後も在宅勤務を活用した働き方が継続される事を見込み、従来の固定席をなくしてフリーアドレス化を決め、在宅中の社員ともスムーズに情報共有できるようペーパーレス化を一挙に進めた同社。「フリーアドレス化に先駆け、執務スペース内の書類用キャビネットをすべて廃止し、書庫のみにまとめたことで収納スペースを従来に比べて7割減にできたのは大きかったですね」と八巻さんは振り返ります。
赤坂Bizタワーのオフィス空間は、中央のエレベーターホールを取り囲んだコの字型の構造。今回のプロジェクトでINPEXは、フロア内側に本部長室と会議室、窓側に執務エリアを置くことを各階共通のレイアウトとしました。八巻さんとともにプロジェクトの実務を支えた総務グループの高柳 圭佑さんは「勤務スペースが固定化されていた以前に比べて、新オフィスではその日の気分や業務に合わせて働く環境を選べるよう、さまざまな席を備えました。デスクの向きや動線もいろいろな人と自然と対話が生まれるようにこだわっています」と話します。
外を向いてデスクを配置した窓際席では、赤坂のオフィス街や皇居の緑を眺めながら働くことができます。一部の席には、各部門からの要望が多かった昇降式デスクを導入し、社員の健康や生産性向上をサポート。また、防音性を備えた1~2名用のボックス席を全フロア合計で約20室設置し、リモート会議のニーズに応えています。
社内アンケートで要望の多かった昇降式デスク。
空間利用を効率化するレイアウトの工夫とデジタルツール導入
現在INPEXでは、所属部門の本部長室周辺のデスクで業務を行うゆるやかなグループアドレスの形態をとっています。「以前は、本部長室は特定の役員エリアにあり、話したいことがあればアポイントをとって訪ねるのが通常でした」と明かす、総務グループ チームリーダーのバンクス マットさんは、当時は人事部門の担当としてプロジェクトに参画。「本部長室が同じフロアにあることで、心理的にも社員の距離感はかなり縮まったと感じています。ドアを常時開放している本部長も多いので、『今少しよろしいでしょうか?』と声をかけやすい雰囲気があります」と話します。
本部長室と会議室は構造が同じであるため「本部長室↔会議室」の切り替えが容易に。また、GM(部長)までの役職者の席は全員フリーアドレス席に変更しました。八巻さんは「これまでは組織再編等による部門増減に応じて、役職者のデスクを用意したり、必要に応じて内装工事を入れて個室を用意していましたが、このような作業が不要となり、大幅に効率化が進みました」と変化を語ります。
本部長室・会議室をすべてガラス貼りとしたのも同社がこだわった点です。在室中かどうかがすぐに分かり、社内のオープンな雰囲気を高めてくれます。ただし、ガラスには特殊な偏光フィルムを貼り、室内で映し出されるモニタを外部から見えないようにして、プロジェクトの秘匿性を確保しました。
また、フリーアドレス化を機に座席予約システムを導入。社員は出社するとスマートフォンで席の二次元コードを読み込んでチェックインし、その日の自分の居場所を登録します。
会議室の運用管理にも同じシステムを活用しており、予約した会議室の利用時には先にチェックインを済ませます。高柳さんは「これまで会議室の利用ルールが社内で十分に浸透していなかったのですが、今回のシステム導入で一気に解決しました。チェックインがなければ自動でリリースしてカラ予約を無くす、予約終了5分前にはアラームで知らせて時間厳守を呼びかけるなど、様々な工夫をしています」と説明します。
ガラス貼りの会議室。ガラスには特殊な偏光フィルムを貼り、プロジェクトの秘匿性を確保。
多様な人との交流を促進するリラックス空間づくり
技術系社員を中心にしたチーム作業では、大型テーブルや大型モニタを備えたブース「協同作業スペース」が活躍します。A0サイズの巨大な図面を中央のテーブルに広げ、周囲を大勢で囲ってあれこれ議論するシーンがよく見られるそう。協同作業スペースの他にも執務エリアの至る所に打ち合わせテーブルを設けており、「オープンな空間なので、そこでどんな話し合いがされているのかが自然と耳に入ってきます。自分が助言できそうな内容であれば飛び入り参加する社員もいたりして、アクセスしやすい環境を実現できたのが良かったですね」と八巻さんは笑みを見せます。
大型テーブルや大型モニタを備えた「協同作業スペース」。
さらに、「Oasis(オアシス)」と「ミニOasis」が社内のコミュニケーションを活性化。Oasisは、2019年に34階に設置されたカフェ風の多目的ルームで、ランチタイムやリフレッシュのほか、社内セミナー、ワークショップ開催などに活用されています。
「以前からOasisは社員に好評で、他のフロアにも同じような空間がほしいという声が多く寄せられていました。そこで今回、無料のドリンクを提供するカフェスペースとして各フロアに設置したのがミニOasisです」とマットさん。仕事ではあまり関わり合わない社員同士の偶発的な会話が生まれるなど、良い動きが起きることをマットさん達は期待しているそうです。ちょっとした打ち合わせやブレストでも利用され、カジュアルなコミュニケーションを促します。
社内の各所に配置される観葉植物も、オフィスのくつろぎ感を演出。「リラックスできる空間への社員の希望は強く、植栽はふんだんに取り入れました。Oasis、ミニOasisはもちろん執務エリアにも緑を加えたことで、社内の雰囲気は大きく変わりました」と高柳さんは述べます。
各フロアに設置した「ミニOasis」。
一層働きやすく、 チームビルディングに適したオフィスへ
プラン検討から設計、工事まで、今回のプロジェクトにINPEXが費やしたのは約1年。「入居しながらの大規模なレイアウト変更でスケジュールもタイトな中、社員にはいろいろ協力してもらう必要がありました。説明資料を用意する等、部署ごとに何度も説明会を開くなど大変ではありましたが、自ら手を動かし、密にコミュニケーション取りながら進めたことが良かったと考えます」と八巻さんは手応えを語ります。
出社が多い部署、少ない部署などばらつきはありますが、全社平均では出社率7割程度まで高めていきたいと同社は考えます。社内規定で週4日まで在宅勤務を認める中、「社員が自発的に来たくなるオフィス」をどう実現していくかが問われています。
「現状は大体いつも同じエリアに座る人が多いですが、より自由な移動を促していくことも今後は重要と思っています。状況に応じて働く環境を変えることで多様な人と触れ合えるのがフリーアドレスのメリットです」と八巻さん。
一方マットさんは、「Oasis、ミニOasisも一層利用を促進していきたいですね。カジュアルなセミナーやイベント開催などで柔軟に使ってもらえるように試行錯誤するところです」と話します。今後コロナ禍による規制が緩和されると、懇親会の機会も増えてくることを想定し、「Oasisでは今までアルコール類は禁止していましたが、例えばチームビルディングのための軽い飲み会などが出来るよう、ニーズに合わせたルールの改定も検討しています」と意気込みを語りました。
近日中には、オフィス利用に関する全社的なアンケートを再度実施予定とのこと。レイアウト変更から1年を経て、さらに働きやすく快適で、社員がつながり合える空間づくりを目指し、INPEXの終わりない挑戦が続きます。
2019年に34階に設置されたカフェ風の多目的ルーム:「Oasis(オアシス)」
取材を終えて~「&Biz編集部」の発見ポイント
どこかゆったり感のあるINPEXの執務エリア。その一因には、固定席のとき使っていた約160cmの幅広デスクをフリーアドレスになった今もそのまま使っていることが挙げられるようです。ペーパーレス化で足元の書類用ワゴンなどを省いた今、1席あたりの面積には十分すぎるほどの余裕があります。すっきり広々な各デスク下を覗き込むと、防災グッズをまとめたリュックを発見! 省スペース化を進めつつも、不可欠なアイテムをしっかり執務エリアに残す工夫を感じました。
固定席のとき使用していた約160cmの幅広デスクを活用した執務エリア。
Company Profile
株式会社INPEX/日本をはじめ、世界約20カ国で石油・天然ガス、その他の鉱物資源の調査、探鉱、開発、生産、販売などの事業を行う総合エネルギー企業。また、低炭素事業として水素・アンモニア、再生可能エネルギー、カーボンリサイクルや森林事業などにも注力し、多様でクリーンなエネルギーの安定供給を通じて、2050年のネットゼロカーボン達成を目指す。
Today's Speaker
株式会社INPEX
総務本部 総務ユニット 総務グループ マネージャー
八巻 幸治さん
株式会社INPEX
総務本部 総務ユニット 総務グループ チームリーダー
バンクス マットさん
株式会社INPEX
総務本部 総務ユニット 総務グループ
高柳 圭佑さん
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