2016.05.31

プロが教える、ビジネススキルとしての自己プレゼン術〜男性篇

テレビや雑誌などでお馴染みのファッションディレクター干場義雅さんは、「男性をカッコよく変身させる」プロ中のプロ。しかしご本人の出で立ちは、決して華美に過ぎることのない、英語で言う「Well Dressed」(身なりの良い)を地で行くもの。常に「誰がため」を問う、干場流着こなし術を紐解いてみました。

男の装いのキモは、「信頼感」の創出にあり!

干場義雅さんが教える、
知性と清潔感にこだわったスーツ着こなし術

─装いの心得は、「信頼」の創出にあり
 僕自身、日に焼けた肌とヒゲがトレードマークになっていますが、装いの基本はあくまでもスーツ。今日は寒かったので、少し起毛感のあるウール生地に、足元にはスエードのブーツを合わせました。その日何を着るかを考えるにあたっては、TPPOが何より大切です。いつ(Time)、どこで(Place)、誰に(Person)、どんな場面で(Occasion)会うか。そもそも、「事を仕る」と書いて仕事と読む訳で、そのためには「信頼」が何より大切です。僕は得てしてファッション業界人という見方をされがちですが、自分自身ではビジネスマンとして相応しい装いを常に心がけています。

─人の信頼を得るために最も重要なのは、ファションよりも「目線」である
 お洒落云々を語る前に、特に我々男性は身体を清潔に保つことに気を付けなければいけません。汚い爪の手で渡された書類を、女性が受け取りたいと思うでしょうか? あるいは、口臭のある男性と積極的に話をしたいと思ってくれるでしょうか? まずは、「清潔感」が何より大事であるということを覚えておきましょう。しかし一方で、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉も忘れてはいけません。女性のように艶やかなマニキュアを塗ることや、歯を真っ白にホワイトニングすることは御法度。やりすぎは、やはり女性からも男性からも気持ち悪く思われてしまうのです。大事なのは、なるべく自然に見えること。無理をすると、不思議と傍目にもそうと分かるものなのです。気を付けて欲しいのは、ファッション雑誌に踊らされないこと! そのまま追従しては、自分のスタイルなどできません。特に働く男性の場合、トレンドよりもドレスコードをわきまえている方がずっと好印象を持たれます。そして何より、人の信頼を得るために最も重要なのは「目線」です。どれだけ着飾っても、目はいじれません。仕事に対する情熱や真摯な姿勢を語らせたら、目は口程にものを言うという訳です。目線を磨き、発する言葉を磨く。ファッションはあくまでもそのための引き立て役なのです。

─覚えておきたい、ビジネスパーソンのためのドレスコード
 ファッションはセンスではなく、「知性」であるというのが僕の信条です。まずは、ビジネスの場で着るのに相応しいスーツの色で言うと、巷では黒を多く見かけますが、正しくはグレーかネイビーが基本となります。シャツは白か水色。清潔感が何より大切なので、安価なものを消耗品として割り切って着るという考え方もありでしょう。ボタンホールやステッチに色がついたようなものは仕事着には不向きです。タイも派手な色や柄はNG。中身の人格に目が行かなくなりますから。そうした基本を押さえることで、ビジネスパーソンとして安く見られるか、高く見られるかが変わってきます。最後に、服はちょっとずついいものを揃えて長く着るというのが基本。長く大切に着られるものに投資するという感覚で選ぶと、見た目のデザインではなく、上質な素材や仕立てに価値を置くように、スーツ選びの観点も変わってくるはずです。「誰がために」という価値観でスーツを選べる人は、仕事もできる人。そんな目で見られているということを、どうぞお忘れなく。


MASTER'S TIPS & HINTS

干場流、"違いの分かる"ビジネスパーソンのドレスアイテム
グレースーツ
「B.R.SHOP」で誂えたスーツ。グレーとネイビーをそれぞれ春夏用と秋冬用の素材違いで揃え、四季を通じて着用する。自分なりのルールを作ることで、「服で悩まなくなる」というメリットも。

グレータイ
イタリアのカシミアブランド「ブルネロ クチネリ」のグレータイ。ベーシックスタイルにこだわりながらも、幅7cmと細めのタイでモダンなVゾーンを構築するのが干場スタイル。

リバーシブルベルト
愛用する「エルメス」のベルトは、ブラック/ブラウンの両面で使えるリバーシブルタイプ。リバーシブルのアイテムは、普段のビジネスづかいだけでなく、荷物の限られる出張にも重宝する。

ダブルモンクシューズ
干場さんがシューズデザイナーの坪内浩さんとのコラボレーションで生み出す「ダブルエイチ」のダブルモンクシューズ。紐靴よりも洒脱な印象を与えるアクセント的なアイテムとしてお薦め。


干場義雅
スタイルクリニック代表・ファッションディレクター
『LEON』『OCEANS』などの男性誌エディターを経て2012年、株式会社スタイルクリニックを設立。現在『Sette Mari』及び『FORZA STYLE』の編集長を務めるほか、テレビ・ラジオでも活躍中。



もっと勉強したい人はこれ!
『世界のエリートなら誰でも知っているお洒落の本質』(PHP新書)

東京で3代続くテーラーの息子として、幼少期から豊かな"服育"を受けてきた干場義雅さんが、自らのファッション哲学や実用的な服装術を語る、初の書籍を上梓! リーズナブルなビジネススーツやカジュアルウェアも手に入るいま、大人の男としての装いはいかにあるべきかを、お洒落のグローバルスタンダードを踏まえて的確にアドバイス。本書を読めば、もう毎朝何を着ていくかで悩む必要はなくなるはずだ。
1,000円(税別)

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