2015.11.24

日立製作所と三井不動産が共同開発した画期的な電力供給自動制御システム「TRAMSBOARD」。テナント企業との出会いから、新しいビジネスチャンスが生まれる。

「TRAMSBOARD(トラムスボード)」は、停電時のBCP対策において最も重要である「電力供給」について、既存の電源インフラを最大限に活かすことでスマートな導入を可能とし、従来工法比較でコスト・工期を約1/2に削減した画期的なシステムです。

この商品を日立製作所と三井不動産で共同企画し、今年7月から日立製作所にて販売を開始。
日立製作所が三井不動産の入居企業であるという縁からスタートしたコラボレーション事例について、2社それぞれの担当者に、きっかけから開発に至るまでの誕生秘話を伺いました。

※ 本記事は、「COMMONS PAGE」のタブロイド版フリーペーパー「COMMONS PAGE press」から、「COMMUNICATION」を転載したものです。

いいものを作って、世の中に貢献しようという共通の目標がありました。

--------まず、今回のコラボレーション事業のきっかけと経緯についてお話し頂けますか?
- 大宅
「私の所属は、英語ではテナント・リレーション&ビジネス・ディベロップメントということで、つまりテナント様との関係の構築からビジネス展開までを手掛ける職務になります。ご入居頂いている企業様とは、扱っている商品をご紹介頂ければ、当社グループでの採用の検討はもとより、ビジネス展開のご紹介等もできますよ、という姿勢でこれまでやってきてますし、新しい事業でも何か一緒に取り組めないか、いつも思案していますね。」
- 相模
「私は日立製作所でビルやマンションのセキュリティに関連するシステムなどを担当していたので、三井不動産さんからの声掛けをきっかけに、きっと一緒に事業を発展できるだろうと2年前にご挨拶させて頂いたのが始まりでした。そこで三井不動産さんからは、BCP(Business Continuity Plan =事業継続計画)の電力供給対策として、もっと効率を向上させ、うまく発電を回す仕組みを構築できないかと相談があったんです。
ディスカッションを重ねながら、足掛け2年で形になったプロジェクトが、今回の『TRAMSBOARD』でした。停電時の非常用発電機の余剰電力を、企業などが入居する執務空間にまで供給可能にする電力供給自動制御システムです。そもそも企業として基本的な信頼関係がある相手ですし、仕事だけでなく飲みを通じても仲良くさせて頂いて、終始和気藹藹(わきあいあい)としたいい雰囲気でご一緒できましたね。いいものをつくって、世の中に貢献しようという共通の目標があったので、お互いフラットに意見を出し合って、佳境のときには毎週のようにミーティングを重ねてきました。非常にスムーズにできたという印象があります。」
- 大宅
「複数社が合同で取り組む新規事業では、共通するテーマを決めるだけでも難儀することがありますが、すでに関係性があったお陰で、時間をかけ過ぎず決めることができましたね。」

--------共同企画においては、どんないい点や悪い点がありましたか?
- 相模
「三井不動産さんからターゲットコストが出てきたんです。目標とする市場価格を明確に提示されたので、そこに合わせるのがチャレンジでしたね。しかしそれがあったことで、初めから競争力のある値付けができたというメリットもありました。」

--------7月に商品をリリースされてから、手応えはいかがでしょうか?
- 相模
「三井不動産さんと一緒に営業していますが、思ったよりも反響が大きくて、毎日バタバタと忙しく回っています。我々も常々、お客様の声に耳を傾けながら商品開発に取り組んできましたが、我々にはビル運営という視点はなかったので、今回は三井不動産さんとご一緒させて頂けたことで、そのニーズを汲めたのだと思っています。」
- 大宅
「私の場合、社内の関係する部署のさまざまなノウハウや課題点を吸い上げ、それを日立製作所様とシェアすることで、世の中のニーズに応える商品を生み出すことができたのだと感じています。今回は言ってみれば、BtoBtoBtoC の取り組みと言えるもので、ビルオーナー(B)、管理会社(B)、そして個々人でもパソコン等を使うテナント企業様それぞれにメリットが提供できたのは、当社に全体的な視点でメリットを考える土壌と体制があったからではと自負しています。」
- 相模
「三井不動産さんと一緒に手掛け、さらに当の三井不動産さんも導入するということがお墨付きになり、信頼度が上がるだけでなく販売においても後押しになりました。営業の際に、『うちにも売って頂けるんですか?』という風に、初めて訊かれました(笑)。」

災害に強い街作りを目指して、インフラの提案を広げていきたいですね。

--------今後、どのような展望と可能性があるのでしょう?
- 相模
「非常時対策という点では、トラムスボードは役所、病院、官庁関連施設にも採用のメリットがあると考えています。また海外でも電力事情の悪いところには潜在マーケットがあるはずで、三井不動産さんと今リサーチしている最中です。日立としては、ビルの監視制御、ビルオートメーションシステムといったものを三井不動産さんにも採用頂いていますが、今回のトラムスボードをきっかけに、BCP対策システムも含めて、中央監視システムから一貫して日立さんにお願いできるものでしょうかと、問い合わせが来るようになってきたことも嬉しい要素ですね。」
- 大宅
「もともとはビルから始まりましたが、災害時のインフラを構築するというニーズは社会全体で高まっています。社会貢献という目線からも、災害に強い街作りを目指し、この様なインフラの普及を進めていきたいですね。」

--------今回は三井不動産とテナント企業間のコラボレーション事例ということで取材させて頂きましたが、ポテンシャルはまだまだありそうですね?
- 大宅
「当社の運営管理ビルのテナント企業様の数は、約3,000 社です。販売チャネル、リレーションの構築はまだまだこれからというところですが、今回の成功例もあり、つなぐという意味ではもっと複数社間でのコラボレーションもきっと生み出せると思っています。長くは数十年来のお付き合いのあるテナント企業様との信頼関係がベースとしてあるという点での安心感は、やはり大きいと言えるでしょう。」
- 相模
「この『COMMONS PAGE』にしても、先進的な取り組みですよね。テナント企業とのリレーションから新しいビジネスを創出し、さらにそれを媒体で発信してくれるというのはすごいですよ。この媒体をハブにして、各企業のアイディアをつなげた事業を創出できたらと思うと、ワクワクしますね!」
- 大宅
「可能性は未知数なので、これからもどんどんご相談ください!」

相模 太(さがみ・ふとし)
株式会社日立製作所 インフラシステム社 産業ソリューション事業部
産業ユーティリティ ソリューション本部 本部長付

大宅将之(おおたく・まさゆき)
三井不動産株式会社 ビルディング本部
法人営業統括部 法人営業グループ 主事

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