2024.01.22

社員とその家族の幸せを実現する、ダイバーシティ&インクルージョン推進

日本橋髙島屋三井ビルディングに入居する株式会社JERAのダイバーシティ&インクルージョン推進室では、「社員やその家族が幸せになること」「企業価値を高めること」をミッションに、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進を加速させています。その一環として、2023年11月25日(土)に開催されたのが、社員の家族を本社オフィスに招いた「D&Iファミリーデー」です。イベント当日、同社を訪ね、執行役員・藤家美奈子さんに、取り組みにかけた思いや手応え、今後への課題についてお話を伺いました。

目次

新たな組織カルチャー醸成に向けたスタート

女性活躍や男性の育児休暇取得の推進、LGBTQへの理解促進、障がい者の働く機会提供。
JERAでは近年、D&Iをめぐる施策を相次いで打ち出し、多様な社員をサポートしてきました。月の勤務日の半分まで場所を問わずに働くことができるテレワーク制度や、育児や介護などで「中抜け」も可能な柔軟な業務時間は、さまざまなライフステージを迎える社員の自由な働き方を支えています。

これに対して、D&I推進の担当役員である藤家さんは、「正直、まだまだこれからという感覚です。女性社員・女性管理職比率などはもっと高めていくべきですし、人材の多様化に向けて課題は山積しています」と認識を示します。
JERAがD&I推進を本格化したのは2019年であり、当時の会長の強力なトップコミットメント発信が皮切りとなりました。「エネルギー企業として国際競争力を高めていくためには、会社をドラスティックに変えていく必要がありながらも、当時のJERAは旧態依然とした体質が残っていました。今の延長線上には自分たちが目指す未来がなく、新しい挑戦にはもっと違った働き方や環境が不可欠、と多くの社員が薄々感じていたからこそ、経営の意思を受けて社内が動き始めたのだと思います」と藤家さんは振り返ります。

「社員の家族」にも取り組みの焦点を当てる

JERAのD&I推進でユニークなのが、「社員やその家族が幸せになること」を大きなミッションのひとつに掲げることです。「家族」というキーワードについて、藤家さんは「社員が安定的に仕事に励むためには、家庭に関わる心配事がないということが大切」と指摘します。かつては「仕事優先、家庭は後回し」が社会常識とされる時代もありましたが、イノベーションを目指し多様な人材を活かしていく上では、そうした働き方ができる人のみが活躍できるような環境では到底不十分です。
「特に若い世代では、男女関係なく子ども関連の用事が当たり前に毎日のスケジュールに入っています。プライベートを大切にする社員が増えており、社員との会話の中で、すぐそばに家族の存在を感じることが非常に多いです」と藤家さんは話します。だからこそJERAは、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ社員だけでなく、その家族も大事にする会社でありたい、そうした会社の姿勢を積極的に伝えていくべき、というのが基本スタンスとなっています。

それでは、社員の家族に対し、具体的に何ができるか。「間接的には、自分の大切な人が毎日楽しそうにJERAに出社するのを見てもらう、満足できる給料や福利厚生を提供する、などでしょう。それもすごく大事です。一方で、もっと直接的に家族の幸せにアプローチしていく方法も考える必要があります」と藤家さんは話します。
こうした背景のもと、2022年より「D&Iファミリーデー」がスタート。社員の家族を日本橋本社に招き、オフィス内を直接見て、JERAへの理解を深め、「自分の家族がここで働いていてよかった」と感じてもらうねらいです。今回、2023年11月が2回目の開催となりました。

参加者を笑顔にするファミリーデーの多彩なコンテンツ

ファミリーデー当日は、執務フロアの24階~26階のほか、18階のラウンジや会議室、16階の労働組合事務所なども活用し、各フロアに多彩なコンテンツを用意。JERAにまつわる動画やパネルを見てクイズに答えるコーナーや、社長室での写真撮影、LEGOで発電所を再現したオリジナルジオラマの展示など、どれも来場者を楽しませる工夫に満ちています。オフィス内には子どもたちのはしゃぎ声が満ち、アップルグリーンのスタッフジャンパーを着た社員のサポートを受けて、各所を回る参加者のワクワク感が伝わってきました。

「コンテンツのベースは、イベント運営を担当してもらった三井不動産ビルマネジメントさんからの提案が非常に多いですね。プロとしてアイデアとノウハウを提供してもらい、その上にJERAらしさを加えていきました」と藤家さん。
JERAが活動を支援している非営利活動法人サクラテンペスタとの協働による「ロボットワークショップ」もそのひとつです。国際ロボコンで活躍する中高生が講師役となって、小さな子どもたちにロボットづくりを教える様子が見られました。同時に、太陽光発電の基本的な仕組みを一緒に学べるのがJERAならではのコンテンツといえます。

また、「サスティナブル塗り絵withダイナソーズ」では、三井不動産が回収した不要な化粧品をリサイクルしたクレヨンを、子どもたちの塗り絵に活用。「当社でもたくさんの社員が使わない化粧品を持ち寄り、今日のイベントだけでもかなりの数が集まりました。良いコラボレーションになったと感じています」

また、オフィスだけでなく、JERAの事業の根幹となる発電所も社員の家族に見てもらうため、「川崎火力発電所見学バスツアー」もイベントの一環として同日に実施されました。午前・午後の2回開催で40名の参加枠には申し込みが殺到し、あっという間に予約が埋まる人気企画となりました。

より多様な参加者が楽しめるイベントとするために

藤家さんは、「準備は大変でしたが、社員の家族に会社を見て楽しんでもらうのはもちろん、社員自身がJERAへの愛着を深める機会としても貴重でした。スタッフ側でも部署を超えたコミュニケーションが生まれ、社員間のつながりも深まりました」と手応えを語ります。社員からは「来年も絶対開催してくださいね」「また手伝います」など総じて前向きな声が寄せられました。

一方で、参加しなかった社員の「無言の意見」も大事にする必要があると藤家さんは考えます。本社オフィスに約1,000名の社員が在籍しているのに対し、今年のファミリーデー参加申込み者は90組320名に留まります。「次回の開催では何を目指しますか?」との質問には、「より多くの、多様な社員が参加してくれるようにしたいですね」と即答がありました。

参加を見送った社員に多い理由が、「うちには、小さな子どもがいないので」というもの。一般に「ファミリー向けイベント=未就学児や小学生のいる家庭向け」というイメージが強く、今回のファミリーデーの内容にもその傾向が見られました。
これに対し、藤家さんは「本当は中高生や大学生のお子さんにもぜひ来てほしいですし、夫婦・パートナーでの参加も増えてほしいです。ご両親や兄弟姉妹を誘った参加なども、もちろん大歓迎です。参加者の層を広げるためには、次回以降、異なる世代・立場の人が楽しめるようなコンテンツの拡充が欠かせないと思っています」と話します。

社員の声を引き出し、施策に反映させる

「声なき声をしっかりと拾いたい」という藤家さんの思いは、ファミリーデーに限らずD&I推進全体に広がっています。これまでにも年1回の社内アンケートで意見を求めてきたものの、変わり続ける状況に対し、それだけでは不十分さが残ります。「例えば、ある制度変更に伴って社員から声が上がらないのは、新制度がスムーズに受け入れられたからなのか、何らかの不満を感じつつもただ黙っているのか。その本音を引き出していく必要があります」と藤家さんは話します。

2023年度には、さまざまな役職・部署の社員を集めてワールドカフェ形式のワークショップを初開催した同社。「JERAのありたい姿をざっくばらんに話し合う、初めての試みでしたが、和気あいあいとした雰囲気の中で活発な意見交換があり、非常に可能性を感じました。D&I推進で気になるキーワードもたくさん出てきており、今後検討を深めたいと思っています」
目指すのは、社員が安心して声を上げ、意見を言えば、会社がきちんと動いてくれるという実感を持ってもらうことだと藤家さんは考えます。JERAらしい「フラットでイノベーティブなカルチャー醸成」を土台に、多様な社員とその家族が幸せを感じられる会社づくりに向けて、同社の挑戦は続いています。

取材を終えて~「&BIZ編集部」の発見ポイント~

見どころたくさんのファミリーデーには、JERAが運営する「横浜ストロベリーパーク」で採れたイチゴの試食コーナーも。横浜火力発電所の敷地内で、最先端技術を駆使して育てられたイチゴは本当に甘く、豊かな風味が口いっぱいに広がります。これらを一粒一粒育てているのは、特例子会社JERAミライフル(代表取締役社長は藤家さん)で働く障がいのある方たちです。事業そのものが、障がいのある方への就業機会の提供につながっているとのお話を伺い、イチゴのおいしさへの感慨もひとしおでした。

Company Profile

株式会社JERA/燃料上流・調達から発電までのサプライチェーン全体に係る事業を担う日本最大の発電会社。2015年に東京電力と中部電力の共同出資により設立され、国内火力発電の半分を占める発電能力と世界最大級の燃料取扱量を誇る。世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供し、持続可能な社会の実現に貢献する。

Today's Speaker

株式会社JERA
執行役員 企業価値創造担当
藤家 美奈子さん

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