2022.10.18

感染症対策にこだわり抜いた、クリエイターファーストの次世代型オフィス

2022年2月、株式会社コロプラは本社オフィスをミッドタウン・イースト(東京・六本木)5、6階に移転しました。
コロナ禍の真っ只中に進んだ同社の移転プロジェクトのコンセプトは、「科学的根拠に基づく最先端の感染症対策特化型オフィス」。感染拡大が続く中でも従業員が安心して出社できる環境づくりや、クリエイターファーストの空間デザインについて、移転プロジェクトを支えた経営管理部のお二人に話を伺いました。
※インタビューはマスクを着用して実施しております。写真撮影時のみマスクを外しております。

目次

  • □コロナ禍でも従業員が安心して出社できるように
  • □感染リスクを抑える素材選びがSDGsにも貢献
  • □コミュニケーション・生産性を高める空間づくり
  • □「すべてに理由があるオフィス」を実現
  • □取材を終えて~「& Life-Biz編集部」の発見ポイント

移転プロジェクトをリーダーとして牽引した森 林太郎さん

森さんとともに移転プロジェクトを支えた副リーダー菅 雅人さん

コロナ禍でも従業員が安心して出社できるように

数多くのスマートフォンゲームなどを世に送り出してきた株式会社コロプラ。約800名の従業員が在籍し、その約8割がさまざまな形でゲーム開発を担うクリエイターです。
同社が本社移転を決めたのは、新型コロナウイルス感染症の影響が広がる2020年12月のことでした。経営管理部部長・森 林太郎さんは「ゲーム開発には、ディレクターやエンジニア、デザイナー、シナリオライターなどいろいろなプロフェッショナルが関わり、チームでのコミュニケーションが極めて大切です。当時はリモート勤務が増えていたものの、画面越しではどうしても最後の一歩を詰めきれないという課題感がありました」と話します。
品質にこだわったモノづくりのため、出社率の向上が欠かせないと考えた同社。そのためにはコロナ禍でも従業員が安心して出社できる環境づくりが大前提となります。「感染状況がどう動くか見えないタイミングではありましたが、社長(当時)の強い意志もあり『感染症対策』という新オフィスのコンセプトが決まりました」と森さん。
予算には、感染症対策のみの費用として1.7億円を計上。移転プロジェクトリーダーの森さんのもと、実務を支えたサブリーダーが菅 雅人さんです。「やみくもな対策ではなく、厚生労働省やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のデータをもとに、あくまで科学的に有効といえる方法を重視しました」とお二人はスタンスを示します。パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社の「くらし・空間コンセプト研究所」の協力を得て、感染リスクを接触感染・空気感染・飛沫感染にわけて考え、それぞれ具体的な防止策へとブレイクダウンしていきました。

代表作のひとつの位置情報ゲーム「コロニーな生活」内のアイテムとして登場し、コーポレートキャラクターでもある「クマ」が出迎える開放感のある受付。

感染リスクを抑える素材選びがSDGsにも貢献

接触感染への対策としてコロプラが重点を置いたのが、抗ウイルスのリノリウム床材の採用です。有害化学物質を出さず清掃性も高いリノリウムは、病院や学校の床に多く用いられますが、国内オフィスで大規模に取り入れるのはコロプラが初とのこと。
「感染症対策に優れる反面、リノリウムを使うと音が反響しやすくなります。天井のルーバーをフェルト張りにするなどして防音性を高め、社内はもちろん他の階に足音が響かないかなど、入居前には念入りにチェックしました」と菅さん。さらにリノリウムは、アマニ油などから製造される環境にやさしい天然素材であり、同社が注力するSDGsへの貢献にもつながっています。
空気感染リスクに対しては、厚生労働省が推奨する換気量「30㎥/h・人」を目安に、換気ダクトを大幅に追加。これについて森さんは「オフィスの調湿機能を高められたのも、ダクトの追加工事の副次効果です。湿度が低いとウイルスが活性化しますが、反対に高すぎるとダニやカビが繁殖しやすくなります。人の健康に最適な50%前後を新オフィスでは安定的に保てるようになりました」と話します。エントランスを抜き天井としたことで、だれもがダクトを直接見ることができ、換気強化の取り組みを実感できます。オフィス内の人の動きを事前にシミュレーションし、換気不足になると想定された箇所には、パナソニック社の「エアリーソリューション」などの最新設備も導入しました。

パナソニック社の「エアリーソリューション」。オフィスへの導入はコロプラが初めて。

飛沫感染対策として特徴的なのは、約40台の個室ブースの導入です。リモート勤務中の人とのミーティングや集中作業に使用し、大人数になりすぎる社内会議では一部の人が個室ブースからオンライン参加することも。出社している人同士がマスクを外して顔を見ながら話せるよう、インターホン付き1on1ブースも設置されています。

インターホン付き1on1ブース(奥)

コミュニケーション・生産性を高める空間づくり

1フロア1100坪の広さを活かした、のびやかなレイアウトも新オフィスの大きなポイントとお二人は考えます。「前オフィスでは建物の構造上、ある程度エリアを区切らざるを得なかったのですが、こちらに来て空間を広く使えるようになりました。見晴らしがよいと社内のコミュニケーションが楽にとれますし、空気が循環して換気面でも有利です」と森さんは指摘します。 5、6階ともに執務スペースはビル東面に集約した上で、6階に受付や来客用スペースを置き、5階には社内ミーティングなどに用いる会議室を充実させました。会議室は大小を取り揃えるというより、10~20名程度で使える比較的広いものを中心とし、ニーズの多い1~2名利用は個室ブースが担います。
また、ランチタイムやちょっとした休憩で自由に使える約200坪のフリースペース「コロパーク」を5階に設置し、従業員が自然と集まれるようにしました。コロパークの脇にあるゲームコーナーには、レトロゲームから最新機種までが取り揃えられ、エンタメ業界をリードするコロプラらしい空間となっています。

リフレッシュや仕事上でも利用するゲームコーナー

チーム業務が多く、ハイスペックなデスクトップPCや複数台モニターの使用率が高いことから、執務スペースはフリーアドレスではなくあえて固定席に。「ただ、全員がいつも同じ場所にいる必要はないので、気分転換に自席を離れて働くメンバーも多々います。私もコロパークがお気に入りで、一人で集中したいときにはよく利用しています」と菅さんは付け加えます。
クリエイターファーストを徹底する姿勢は、オフィスの色使いにも表れます。社内は白を基調に木目を組み合わせた落ち着いた雰囲気でまとめられており、これはデザイナーが画面の中で扱う色の感覚に影響しないよう、なるべく視界に入る情報を抑えた結果だそうです。

「すべてに理由があるオフィス」を実現

感染症対策に留まらず、コロプラでは健康経営宣言のもと従業員の健康に細かく配慮。社内の「Kuma SPA」には国家資格を持つプロのマッサージ師が常駐し、週に1度、従業員はだれでも就業時間中にマッサージを受けることができます。また、「無限バナナ」と題したバナナ食べ放題スタンドもあり、森さんは「バナナは実質個包装なので、感染リスクを抑えながら従業員が手軽に栄養補給できます」と笑顔を見せます。
各種対策の結果、コロプラは2022年6月には健康・安全性のグローバルな認証システム「WELL Health-Safety Rating」を取得しています。さらに、経済産業省と日本健康会議が実施する「健康経営優良法人」にも2年連続で認定されました。
移転プロジェクトを振り返り、お二人は「すべてに理由があるオフィス」とすることができたと手応えを感じています。「なぜここにこの什器があり、素材はこれで、こういうデザインとなっているのかを全部答えることができるのは、細部までこだわり抜いたからこそ。ある意味、開発現場のメンバーがゲームをつくり込んでいくのに近い感覚のプロジェクトだったかもしれません」という森さんに同意し、菅さんもまた「感染症についても徹底して対策をとってきたことを皆が理解してくれ、『コロナが心配』という声を社内で聞かなくなったのが非常によかったです」と話します。
今後に向けてお二人は、「さらに働きやすい環境づくりのため、ソフト面で改善できることはまだまだあると思います。モノづくりの会社だけにトライ&エラーには寛容な社風があり、ぜひいろいろ積極的に挑戦してみたいですね」と話してくれました。

国家資格を持つプロのマッサージ師が常駐する「Kuma SPA」。落ち着いた空間で仕事の合間にリフレッシュができる。

取材を終えて~「& Life-Biz編集部」の発見ポイント

クリエイターの創造性を高めるユニークな空間が多い同社ですが、中でも「クマ図書館」は印象的でした。今人気のコミックシリーズや、書店から提案されたビジネス書、管理職のオススメ本などが並び、図書との偶発的な出会いが楽しめる場となっているそうです。通常の図書館と同じように、社内システムで検索や予約、貸出登録ができ、リモート勤務中の人でも自宅へ配送してもらえるとのこと(発送手配には総務の皆さんが活躍!)。どこで働いていても情報量に差がつかないように、という細やかな心配りを感じました。

多くの図書が揃う「クマ図書館」。今後も増冊予定。

Company Profile

株式会社コロプラ/位置情報ゲーム「コロニーな生活」を発祥にエンターテイメントの新境地を切り開き、2011年頃よりスマートフォンゲーム開発を主力事業として展開。「魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」などさまざまなヒット作をリリースする。若手起業家の支援やVR企業への投資も。
https://colopl.co.jp/

Today's Speaker

株式会社コロプラ
コーポレート本部 経営管理部 部長
森 林太郎さん

株式会社コロプラ
コーポレート本部 経営管理部 総務グループ マネージャー
菅 雅人さん

【お問合せ先】
三井不動産ビルマネジメント株式会社
ビジネスソリューション事業推進本部 担当:太田・関口・興津
メール:event@mfbm.co.jp

※本サイトのサービス名称は、2023年3月31日より「&BIZ」へ名称変更いたしました。

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