
2025.08.19
「誰もがパフォーマンスを発揮できるチームとは?」 LGBTQ+トークイベントレポート
6月はLGBTQ+の権利について啓発を促す「プライド月間」であることを機に、6月25日(水)、東京ミッドタウン八重洲にて、LGBTQ+への理解を広めることを目的としたイベントが開催されました。主催は、住友生命、ダイキン工業、大和証券グループ、三井化学、三井不動産の5社。ゲストとして、元女子プロサッカー選手でLGBTQ+の当事者であることを公表している、株式会社wagamama共同代表の下山田志帆さんと内山穂南さんをお迎えし、現地会場とオンラインで多くの方にご参加いただきました。
■ゲスト紹介

下山田志帆さん(写真右)
1994年生まれ、元女子プロサッカー選手。慶應義塾大学卒業後、ドイツと日本でプレー。在独中の2019年に、現役選手としては日本で初めて、LGBTQ+当事者であることを公表。同年に、内山穂南と共に株式会社wagamamaを創業。現在は、企業・学校向けのDE&I研修・講演会事業や、アスリートやLGBTQ+当事者視点のブランド運営を行っている。
内山穂南さん(写真左)
1994年生まれ、元女子プロサッカー選手。早稲田大学卒業後、イタリアでプレー。2019年に帰国し、下山田志帆と共に株式会社wagamamaを創業。現在は、ブロックチェーン技術を活用したパートナーシップ証明書を発行する「Famiee」での活動や、一般社団法人ATHLETE SAVE JAPANの理事としてAEDの普及など、幅広くアクションしている。
女子サッカー界では自分がマイノリティだと思わなかった
明るくて心地よい会場に、早くから準備で入っていたゲストのお二人と、リアルで111名、オンラインで90名の皆さまが揃い、16時半にスタート。スクリーンに写真や図などを映し出しながら、お二人自身による活気に満ちたトークで進行していきます。冒頭で内山さんが「こういう研修は何回やっても緊張しますね」というと、下山田さんが「そうかな」と答えて会場に笑いがあふれ、一気に和やかな雰囲気に包まれました。
まずは自己紹介。高校の同級生であるお二人は「小学生からサッカーをしているので、女子サッカー界には20年くらいお世話になっています」とし、LGBTQ+の当事者であることも伝えられました。
そして、「女子サッカー界には、DE&Iのヒントがたくさん詰まっていると思う」と内山さん。その一つとして、「メンズ」という言葉があるからではないかと話します。明確な定義がある言葉ではありませんが、性表現が男性的で、性自認が女性ではない、女性のことが好きになる女子選手たちを指し、女子サッカー界で使われてきた表現です。女子サッカー界では当たり前の存在だったため、自分をマイノリティと思ったことはなく、「大好きなサッカーのことだけを考えてパフォーマンスを発揮できた」と下山田さんは強調されました。
そこで、「パフォーマンスを発揮できていると感じるのは、どんなときか」を考えてみることに。内山さんは「心技体」の言葉を挙げながら、ある図を提示します。それは、丸い形をした「心」が土台にあり、その上に「体」と「技」がピラミッド状に積み重なったもの。「心はとても揺らぎやすく、ここが不安定だと体や技があっても力が発揮できなくなる。これはサッカーをする中で感じてきたことですし、たとえ組織やフィールドが変わっても同じことがいえるのではないかと思います」。

性のあり方は多様なのに、男女の二元に基づくルールが多い
いよいよ、ここからが本題。前半は「性のあり方の基礎知識」ということで、さまざまな言葉の意味を説明しながら、理解を深めていきます。
さっそく「皆さん、人間の性別は何で判断していますか?」と問いかけます。「性のあり方は、『出生時に割り当てられる性』、『性自認』、『性的指向・恋愛指向』、『性表現』という4つの要素で構成されています」と下山田さん。これらを組み合わせた「SOGIE(ソジー)」という言葉が紹介されました。

上記以外にも、近年、さまざまな言葉が広まっていることを教えてくれました。たとえば、性自認のあり方に関し、出生時に割り当てられた性と、自分が認識している性が一致していると「シスジェンダー」、一致していないと「トランスジェンダー」。また、出生時に割り当てられた性に関わらず、性自認は男・女に当てはまらない、あるいは当てはめない、というあり方を「ノンバイナリー」と理解します。
下山田さんが「それでいうと私はノンバイナリーですが、内山はトランスジェンダー男性だね。いつ頃から自覚していた?」と質問。「自分に割り当てられた女性という性に対して、なんか違うという感覚は小さい頃から。親に『かわいい服を着て』とか『ピアノを習って』といわれると、『嫌だ!』『サッカーがしたい』って」と内山さん。
「私も学生の頃はトランスジェンダー男性だと思っていた」という下山田さん。「でも、女性として扱われたくないだけで、男性として扱われたいわけじゃない。だからノンバイナリーという言葉が日本に入ってきたとき、『これだ!』と思った」と振り返ります。今、たくさんの言葉があってややこしいと感じる方がいるかもしれませんが、「言葉があることで、自分自身をきちんと伝えられるメリットがある」と話しました。
そして、性のあり方はこんなに多様なのに、世の中の制度やコミュニケーション、風潮は男女二元論・異性愛前提に基づくことが多い、とお二人。「『男はこうあるべき』『女はこうあるべき』『普通はこうだよね』であふれている」と指摘します。
会場に集まった皆さまは、スクリーンに次々と映し出されるたくさんの言葉を注視し、その説明にも真剣に耳を傾けている様子。お二人自身の思いや実体験も交えながらリズムよく進む話に、ときに反応し、ときに納得した表情を見せています。

封じられた「ワガママ」こそ、チームの「我がまま」につながる
後半は、イラストや動画を見たり、ライブアンケートツールSlidoを使ったりしながら、「誰もがパフォーマンスを発揮できるチームとは?」を一緒に考えていきます。
ここで「DE&I」の意味を再確認し、「多様な人が集まるだけでなく、一人ひとりがパフォーマンスを発揮できる機会が与えられて、初めてDE&Iを推進したといえるのではないか」と言及。つまり、多様な人材が心配事なく活躍できる取り組みが大切、とのこと。では、「LGBTQ+当事者の心配事は何ですか?」との質問に対しては、先述の「男」「女」「普通」に基づいた制度やコミュニケーション、風潮をどれだけ減らせるかではないか、と考えを述べられました。
そこで例に挙げたのが、内山さんがプロサッカー選手としてイタリアに行ったときのエピソード。チームメイトに「うっちーって、男性と女性のどっちが好きなの?」とナチュラルに聞かれ、そのチームメイトは「私は女性のパートナーがいるよ」と、これまたナチュラルに答えたというもの。下山田さんもドイツで同じ経験があり、「どう話すか悩まなくていいって、こんなにラクなんだ」と思ったのだそう。さらに、「そういうコミュニケーションができる人がチームメイトだと、パフォーマンスにつながる」というと、内山さんも「間違いない」と太鼓判を押しました。
Slidoを使ったワークショップでは、この日の話を踏まえて「3日以内にできるアクションを教えてください」と投げかけます。皆さまからは、「今日の話をさっそく共有したい」「LGBTQ+の方がどんなことにモヤモヤしているのかを調べる」等の声が続々と到着。それを読んで、「いろいろなところでアクションが生まれるって素晴らしいことなので楽しみです」と、お二人とも嬉しそう。
最後に、下山田さんは、「女性だから」と決められたあるルールが嫌で「ワガママ」といわれたエピソードを紹介。「自分と同じように『ワガママいうな』っていわれてきた人って、実はたくさんいるんじゃないかな、と。その聞かれてこなかった声、ワガママな声こそが、チームみんなの『wagamama(我がまま)』につながるんじゃないかと思います」と締めくくりました。
結びのメッセージもいただきました。
下山田さん「LGBTQ+当事者に限らず、違和感をもっている様子や、誰にも聞いてもらえない姿を目の当たりにしたら、『どうしたの? 一緒に考えよう』と一番に言える人であってほしいし、皆さんといろいろな声に耳を傾ける機会を増やしていきたいと思っています」。
内山さん「私たちは会社としてワガママをwagamamaにしようと活動していますが、皆さんの周りにもwagamamaでいられる場所を増やしていきたいので、これからも、今日考えたアクションにチャレンジしていただけたら嬉しいです」。
あっという間の90分でしたが、参加された皆さまも一緒に考えることができる貴重な時間となったようです。終了後は、会場全体で記念写真を撮影。その後に開催された懇親会にも多くの方が参加され、下山田さんと内山さんも交えて、この日の感想や考えたことなど、活発に意見交換をされていました。
『三井のオフィス』は、みんなが生き生きと活躍できる環境づくりに向けて、今後もさまざまな情報発信やイベント開催などの取り組みを通じ、DE&Iを推進していきます。

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